「別冊映画秘宝 特撮秘宝 Vol.8」


狂った雑誌も8号目。

当然買ったが、今号の内容には少し不満。
いくら対象が関係者でも、アンケート企画や座談会はあまり好きではないので。
バラン関連の記事や、山浦弘靖の「ウルトラQ」新発見プロットは良かった。
こんな記事がもっと増えれば嬉しい。

次号も楽しみだが、表3の広告に載ってる近刊(来年だけど)2冊が楽しみ。

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H・P・ラブクラフト「ウルタールの猫」

ラブクラフトの作品で、〈心温まる〉ものはないと思うのだが、『ウルタールの猫』は良かった。

べつにこれも、〈こころあたたまるおはなし〉ではない。そんなに怖くもない。
ただ猫好きには堪らないだけのことだ。
猫大好きラブクラフトの面目躍如。
猫が嫌いな人間なんてみんなウルタールの猫に殺されてしまえ。

細野晴臣「Vu Jà Dé」

今頃になって細野さんの『Vu Jà Dé』にハマっている。
初めて聴いた時はピンと来なかったのだけど。


Disc1は近作の流れを汲むカバー集。
こっちもライブでこなれた曲ばかりで充分愉しいが、最近何度も聴き返してるのはDisc2のほう。


副題は〈Essay〉。
年代も幅広く、新曲からデモに手を加えたものまで収録されていて、『アーカイブス』第2弾といった趣。
どちらかといえば小品が多いのだけど、そこに込められたメロディやアレンジの豊かさに唸らされるばかり。
というか唸るほどの音楽的素養もないので、ただただ繰り返し聴くばかり。
たとえば1曲目の「洲崎パラダイス」にしても、サビのメロディの付け方が妙に耳に残ったり。
この曲を聴くと、細野さんと大滝さんで昭和30年代の東京を再訪するようなアルバムを作って欲しかったと思う。風街とは違う角度で。

セルフライナーノーツも勉強になるなる。
探究心と好奇心を失わずに歳をとりたいと心底思う。

松沢呉一「魔羅の肖像」

『秋葉原事件』の次は『家族喰い』を読むつもりだったが、流石にヘビーすぎるのでやめた。免疫力が下がる。

代わりにチンマンの本を読んでいた。
松沢さんの本だから、テキトーに読み流すつもりでいるとブン殴られる。かといって眉間に皺寄せて読む本でもなかろうて。
戦後の性科学研究の流れとか、前提知識がないと読みにくい部分もなくはない。
でもこれまた大著ながら名著。チンマンは奥深い。

中島岳志「秋葉原事件 加藤智大の軌跡」

もう10年も経つんだなぁと思いつつ、ひょっとしたら読まないほうがよかったかもしれない一冊。

事件当日は神保町でバイト中だったので、急にあたりがヘリの音で騒がしくなったり、絶え間なく救急車のサイレンが聞こえてきたり、この事件についてはやけに鮮明に記憶している。
とはいっても、それほどショッキングな事件だと感じた記憶もない。何事も全貌が把握できるのは距離を取ってからだ。

加藤智大の軌跡を辿っていくと、著者がいうところの〈痛み〉を感じる瞬間も結構ある。
「わかるよ」とは言いたくないが、共感してしまう瞬間があり、加藤のほうが自分よりもマトモに生きているように感じられる瞬間もある。
人を殺したか殺してないかだけで、加藤や宮崎勤と自分との距離は結構近いと思わざるを得ない。

余談。
〈プロローグ〉を読むと、秋葉原がパソコンと家電の街からオタクの街に変貌していく、ほんの束の間に自分が立ち会っていたことがわかった。大体96〜97年ぐらい。
海洋堂ホビーロビーやガレージキットを取り扱う店もそこそこあって、それでも秋葉原といえば石丸電気やビックカメラ、そういう時代。
あの頃の秋葉原なら、もう一度行ってみたい。

ルイ・マル「鬼火」


原作小説がジャック・リゴーをモデルにしていることを知ってから観てみる。
なるほどパリにいる旧友たちはシュルレアリスム運動周辺の連中だったのかと気づく。
もろにデスノスみたいなやつも出てくるし。

それにしても、うつ病とうつ状態の間、病人と健常者の別れ目はどこにあるんだろう。
精神医療では主治医を信頼しないと寛解なんてあり得ないが、それはほとんど不可能なことだと思う。
少しでも医療側に不信感を抱いたら最後、文字通り最期なんだろう。

サティの音楽は本当に希死念慮によく似合う。

松沢呉一「闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記憶」

久しぶりに面白かった本。

2部に分かれた大著。
第2部の〈日本街娼史〉も充分面白いが、第1部の街娼インタビューがその上をいく面白さ。
人生いろいろ、じん性ERO・EROだなぁとつくづく思う。

もちろん単なるエロ読み物ではなく、著者の〈個の自由のために生きた、闘った人たちのことを記録したい〉という想いの産物であるから、響いてくるものも大きい。
警察と最高裁まで争った札幌の街娼の話なんか、少し感動してしまうし、自分だったらどうなのか、と刃物を突きつけられた気分にもなる。

面白かった。インタビューをもっと読みたい。