The Who「Odds & Sods」

リミックス・リマスターのもう一つの問題点は言うまでもなく〈音〉。
個人的にはよく批判される、オーバーダブ時の音が欠落したリミックスはそれほどは気にならない。(あくまで下の問題点と比較して、ですが)

それよりもテープスピードの変更が気になってしまう。
たとえばストーンズの「BEGGARS BANQUET」みたいに、アナログのプレス過程で当初の意図と違うピッチでプレスされてしまった、だから再発にあたってテープスピードを修正した、というなら全然OKだと思う。
自分がイヤなのは、バンドがミックスダウン時に調整したテープスピードを、レコーディング時のものに戻す、という手法。
これって復元でも修正でもなんでもなくて、完成品を未完成の状態に戻す作業じゃないのか…?と思う。
もし「When I’m Sixty-Four」のピッチを元に戻したら、ポールはブチ切れるんじゃないだろうか。

バンドが施したピッチ調整には間違いなく意図があるわけで、その過程を経たものが完成品、オリジナルになる。
そこの意図を無視して、ただ、レコーディング時のスピードに戻しても、それはオリジナルの状態に復元したことにはならないと思う。
音質向上とは方向がズレているように思えるピッチ調整がやけに目立ったのが「ODDS & SODS」。

oddsandsods1974

今回の再発で一番嬉しかったのがこのアルバムだ。
なにしろリミックス時の扱いが酷すぎた。曲順は完全に変えられちゃったし。
もともと編集盤みたいなもんなんだから、という意見が多いのかもしれないけど、メンバーが選曲して、ジャケのアイディアも出して、オーバーダブやリミックスまでしたアルバムなんだから、やっぱりオリジナルに準ずる扱いをするべきだと思う。

選曲を担当しながら自作曲は1曲しか選ばなかったジョンは、バランス感覚があるというより、単に手持ちの未発表曲が「Postcard」しかなかったんじゃないかという気もする。

その選曲は、結成10周年に相応しい濃い内容で、裏「MEATY BEATY BIG & BOUNCY」と呼んでもいい。
ボツになっていただけあってイマイチな曲もあるが、イマイチながらもやっぱり魅力があって、Whoファンの踏み絵みたいな一枚だ。

「Postcard」
アルバム中唯一のジョンの曲。68年のUSツアー中に書かれた…となんかで読んだ記憶が。
明るいというより躁を感じさせる曲で、同時期に書かれた「What Are We Doing Here?」と対を成すものだと思う。
本作に収録するにあたってオーバーダブしたのか、キャンセルEP版より分厚くモッサリ目のホーンがいい。

「Now I’m A Farmer」
なんでこんな題材を選んだんだろう。ミニオペラだが、垢抜けなさと妙な疾走感がいかにも68年のフーを感じさせる。方向性は見えなくても曲だけはどんどん湧いてきたんだろうなぁ、ピート。

「Put The Money Down」
72年の楽曲群の特徴は、重めのリズムアレンジとリフ主体の構成にある。71年に書かれた楽曲の多くは、透明感のある和音を多用したアコースティックな感触の強いものだが、それらとは明らかに趣が違う。
ピートのこの変化は、じつはジョンの1stソロに因るところが大きいんじゃないかと思う。
特に1曲目の「My Size」。攻撃的なリフにジョンの欲求不満を聴いて取り、それが「Join Together」や「Relay」、この曲を書かせたんじゃないだろうか。
ちなみに「My Size」はボツになったニール・ヤングの「Cinnamon Girl」に替わる曲ということで急遽書かれたらしいが、70年のタングルウッドでは、インプロの最中ピートが突然この曲を弾き出す。
当時2人がヤングをどう聴いてたのか、深層部分でこのへんのフーにどう影響を与えたのか、想像すると楽しい。

「Little Billy」
待ってましたオリジナルミックス。
投げやりな歌詞とポップ過剰なメロディーの相乗効果。「Call Me Lightning」なんかよりこの曲をシングルにすれば良かったのに。
アナログを爆音で聴くと最高に気持ち良かったが、今回のリマスターも充分気持ち良い。
ミッシェルの「Smokin’ Billy」はこの曲となんか関係があるのか、前から気になっている。

「Too Much Of Anything」
クリス・チャールズワース氏はメロディーに説得力がないと酷評していたが、これも名曲。
リズムチェンジ等、「Is It In My Head」のプロトタイプ的側面もある。

「Glow Girl」
68年はピートの躁鬱の波が激しかったのか、とにかく変な曲が多い。メロディアスではあるけどダウナーでクセが強い。その代表がこの曲や「Faith In Something Bigger」だろう。どこか宗教的な匂いもする。ミハー・ババの教義には輪廻転生も含まれていたのか?
タイトルを正確なニュアンスで訳すとどうなるのか知りたい。

「Pure And Easy」
曲、詞、演奏、歌、ミックス、すべてにおいて完璧な曲。こんな曲をボツにしておくところがフーの凄いところだ。
グリン・ジョンズのミックスは大音量で聴くと、アコギのエコーが目の前で空間に溶けていって快感。和音使いピートの曲想とうまく噛み合っている。
でも一番好きなのは「WHO CAME FIRST」に収録された、ピートのデモをエディットしたヴァージョン。宅録の最高峰。
映画「AMAZING JOURNEY」がまだ「MY GENERATION」のタイトルで制作中だった頃、監督がブログでこの曲の良好なライブテープ、フィルムを持っている人はいないか呼びかけていた。結局完成作品ではスタジオ版が使われていたから、もう当時のテープは残ってないのかもしれない。ヤングヴィックよりこなれたライブをいつか発掘して欲しい。
そして一度でいいからライブで観てみたい。まだ遅くないはず。

「Faith In Something Bigger」
これも不安定なピートの不安定な一曲。
やっぱり内面的な詞世界だが、同種の曲では「Melancholia」のほうがより魅力的だと思う。でも中毒性が高いのも事実で、たまに聴きたくなる。

「I’m The Face」
これもリミックスよりきちんとショボいオリジナルの方がいい。
ピートっぽさはないけどギターソロもカッコイイ。

「Naked Eye」
69年か70年の録音だと思うが、この曲こそグリンに録って欲しかった。この録音も出来はいいと思うけど、やっぱりドラムが「NEXT」収録曲と較べるとこぢんまりしていて弱い。ライブで演ってこその曲ではあるけど。
この曲とか「Water」、「I Don’t Even Know Myself」あたりの、”プレLIFEHOUSE”期の曲にどうしようもなく惹かれる。なんか勢いがあるんだよなぁ。シンセを使わないライブ叩き上げのこの頃のサウンドで一枚作って欲しかった気もする。

「Long Live Rock」
フーっぽくない曲調なので最初はあまり印象に残らなかった。それが一転したのは勿論「THE KIDS ARE ALRIGHT」を観てから。ジェフ・ステインは本当にフーをわかっている監督だ。
72年の時点で「ロックは死んだ」って言ってるのも凄い。
不思議とライブ音源が少ない気がする。

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リミックス・リマスター

フーの〈オリジナルマスター〉での紙ジャケ再発に際して、94〜02年の一連の〈リミックス・リマスター・プロジェクト〉についていろいろと考えたことを、せっかくなのでまとめておこうと思う。

thirtyyears

そもそも自分がフーのファンになったのはリミックス盤が出揃ったあとだし、そっちをオリジナルミックスより先に聴いたアルバムもある。
だからリミックス盤にはお世話になったし、抵抗もそれほどなかった。
それが変わってきたのはプロジェクト全体の監修者、クリス・チャールズワース氏の「全曲解説」を読んでから。
この本は曲によってはかなり手厳しく書かれている。でもそれはいい。欠点にもきちんと目を向けるのがファンだと思うし。
ただこの人の場合、「QUADROPHENIA」を境にしてアルバムへの評価が変わりすぎる嫌いがある。特にケニー期の2枚についてはボロクソで、「キース時代至上主義」が露骨に表れている。
一冊のディスクガイドならべつに問題でもなんでもない。ただ、氏がその価値観をリミックス盤の編纂に持ち込んだよいに見受けられることはどうかと思うのだ。
個人のなかでアルバムに優劣がつくのは自然なことだけど、送り手が好みに従ってリイシューを進めるのはやっぱりダメでしょう。

一連のリミックスプロジェクトの問題点は、この〈監修者の過剰でアンバランスな思い入れ〉にあると思う。
ジョン・レノンのリミックス盤がイマイチ好きになれないのもこれと同じで、音云々よりもアルバムの扱いやボートラの選曲が全て、ヨーコさんの思い入れでされてるのがイヤなのだ。
「SOMETIME〜」の一部曲カットとか、いくら奥さんでも、やり過ぎ。
フーの場合そこまでひどくはならなかったけど、「ODDS & SODS」はタイトルもジャケも変えられかけたり、ケニー時代の2枚は2in1でやっつけられそうになったり。
価値判断するのはあくまでもアルバムを聴いた個人個人であって、送り手が〈この2枚はつまらんから2in1でいいや〉っていうのはやっちゃいけないことだと思うし、そうならなくて良かったと思う。

でもその影響は随所に残ってて、
・「THIRTY YEARS〜」ボックスの選曲バランスの悪さ
・「ODDS & SODS」の曲順
・ケニー時代2枚のやる気のなさ丸出しのペラペラのライナー(しかもモノクロ)
あたりはちょっとひどい。

なんか思ったより長くなったので、音に関しては「ODDS & SODS」評とまとめて書こうかな。

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Fアート

F全集12月配本は、「ウメ星デンカ2」「大長編ドラえもん4」「SF異色短篇2」。
正直インパクトの弱い3冊。
なのでもう次回配本の「モジャ公」を楽しみにしてる。解説は宇多丸らしいのでやや期待増。
こういう全集の解説をタレントやなんかが書くのは嫌いだけど、結局のところ人によるんだよな。
(「ドラえもん」の何巻かの解説は千原ジュニアの駄文だった。ああいうのはやめてほしい。最悪)

F全集の予約特典「Fアート」も到着。
早川文庫の挿絵が大迫力。直筆の年賀状もかわいい絵柄が多くて、F先生の人柄が滲み出てる。

The Who紙ジャケ購入

21日発売のThe Who紙ジャケ、結局全11タイトル買ってしまった。
まだ音は聴いてないけど、帯やジャケ、インナー等々…眺めてるだけでも満足度は高い。

不満があるとすれば、レーベルが相変わらずダサくて味気ないこと。
レーベルカードが付くのは嬉しいけど、もうちょっとやりようがあるんじゃ…。
あと思いっきり重箱だけど、ジャケを入れるセロパック。糊がフタ側に付いてるのは扱いづらいからやめて欲しかった。
まあ無理矢理ケチつけてもしょうがないし、じっくり楽しもう。

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夢見る力

石堂淑朗氏が亡くなったと思ったら、今度は市川森一氏が亡くなってしまった。

円谷では「ウルトラ」も「怪奇」も「ブースカ」も傑作揃いだし、特に「ブースカ」は、金城さんにも上原さんにも描けない市川さんだけの世界だったと思う。
特撮以外だと「傷だらけの天使」ぐらいしか観てないけど、当然大好きだ。

でもやっぱり、市川森一といえば「私が愛したウルトラセブン」をまず思い出してしまう。

sevenilovetitle

当時の円谷プロに集まった人々の熱気と、その時代に対する氏の想いが伝わってくる、本当に素晴らしいドラマだった。
前編後編のタイトルがそれぞれ、「夢で逢った人々」と、「夢見る力」
まさしく市川さんの作品から夢見る力をもらったと思う。

デビュー作の「ブースカ月へ行く」は、円谷英二監督の「かぐや姫」への想いを知って書かれたそうな。そんな氏が皆既月食の夜に旅立つのも、不思議な感じがする。
ありったけの感謝をこめて。
御冥福をお祈り致します。

原田芳雄追悼「竜馬暗殺」「大鹿村騒動記」@早稲田松竹

早稲田松竹にて、原田芳雄さん追悼二本立て。

いかにもATGな「竜馬暗殺」。主演の3人が3人なのでフィルムを満たす緊張感がハンパないが、3人が3人なので笑えるところはちゃんと笑える。
あの時代特有の挫折感と相まってこれはもう超一級のハードボイルドなのであった。

「大鹿村騒動記」は「原田芳雄の遺作」という前知識なしで観たらそんなに後を引く映画じゃなかったかもしれない。
ただもう全編原田芳雄の独壇場なので満足度は高い。
石橋蓮司との共演を2本続けて観ると、ここに優作がいたらなあと思うし、大楠さんとの絡みを観ると敏八さんがいたらなあと思う。
まるでカーテンコールのような映画だ。

ヒッチコック「サイコ」



中学の頃に一回観たが、展開がタルく感じられて途中でやめた。なのでちゃんと観るのは初。
面白かったし当時としては衝撃的だったのはわかる。わかるけどエド・ゲインの実際の所業を知ってしまっているので、インパクトは弱い。シャワーシーンも巧いとは思うが怖くはない。
一番怖いのはやっぱり最後のノーマンの顔か。

「怪奇大作戦」の「青い血の女」が本作を引用してるのがよくわかった。ノーマンの母よりアレのほうが百倍怖い。

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