追悼・大瀧詠一

こんなタイトルのエントリーを今こうして書いているのが信じられない。信じたくない。
今年は嫌な年だったけど、ここまで追い討ちをかけるのか…。

「風街ろまん」と「ロンバケ」の次に「ファースト」を聴いた。衝撃的だった。同じ頃宅録の曲を書き出したけど、どれもこのアルバムからのパクリだった。
ギターを持ちたいと思わせてくれたのはビートルズ。じゃあ自分の声に合った曲はどんな曲か。最初のヒントを与えてくれたのが大滝さん。14年前の3月。朝の5時頃だったと思う。寒い部屋でレコ聴いてた。
とにかくどうしようもなく魅力的だった。まだナイアガラの深みも知らずに。

次に聴いたのが「EACH TIME」。「ロンバケ」の延長線上にありながら重厚でギミックを駆使したアレンジに、最初はすんなり入っていけなかった。
しかしこのアルバムに付いていたインナースリーブで、ナイアガラの魔力に完全に捉えられた。
大瀧さんのレーベルオーナーとしての俯瞰的な視点がこのようなラインナップとして結実したんだろう。コロムビアとの契約のせいもあり、やっつけとしか言いようのないアルバムもあるが、それも最初から織り込み済みだったんじゃないかとすら思わせる。コンセプトや企画盤の面白さに気付かせてくれたのが、この趣味趣味全開のインナースリーブなのだ。こんなに楽しそうなレーベル、他にはありません。

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大滝さんの音楽論とかその実践としてのナイアガラに開眼させられた人はとんでもなく多いはずで、「ロンバケ」の人とかそういう次元の話じゃない。
大滝さんがいなかったら興味を持たなかったミュージシャンなんて数えきれない。
優秀なミュージシャン、プロデューサー、ソングライター、エンジニア、歌手、DJ、評論家、研究家…。
大滝さんの七つどころではない幾つもの顔が、すべて消えてしまった。

仙人みたいに長生きしてくれるものだと思っていました。いや、本当に仙人になってしまったのか、淋しいです。
言いたくないけど、安らかにお眠り下さい。

さようなら。本当にありがとうございました。

安部公房とダニエル・ジョンストン

ダニエル・ジョンストンの「Some Things Last A Long Time」を初めて聴いたときから、頭の中には真知夫人の「壁」の挿絵が思い浮かんでいた。
どうしようもない物悲しさが通奏低音だ。

たけし、ドルフィー、沖縄

『3-4×10月』にはドルフィーやアイラーの曲を使用する予定だったが、権利関係でポシャってしまい、その結果、完成作品では音楽が一切省かれたという。

殿がどの曲を使いたかったのかは知らない。ましてドルフィーのこの曲は87年になってから発掘されたらしいので、ジャズ喫茶時代の殿が聴いているはずがない。
でも映画全編を包む白昼夢的なイメージには「Inner Flight Ⅰ」がよく乗る。
ブリッジ的に使うならバスクラのブローがいいのかもしれないが、『Out To Lunch』、『Last Date』の曲はあまり乗らなかった。

Eric Dolphy「Out To Lunch」

ジャズは広く浅く、名盤として評価が定着してるものならハズレもないだろうと思ってちょっとずつ聴いてきた。
モンクとかビル・エヴァンスとか、好きなミュージシャンもそれなりにいるけど、ポップスのようにのめり込んで聴くというより、敷居の高さを感じたまま“鑑賞”するという感じで、いまひとつ楽しみ方が分からない。楽典に疎いからしょうがないんだけど悔しい。

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で、いまさらながらにドルフィーを聴いた。凄い。
中毒性の塊。1週間ぐらいドルフィーばかり聴いている。ジャズを心底楽しめたのは初めてかもしれない。アルバムによってはやっぱり良さが分からないのもあるが、『Out To Lunch』と『Last Date』だけは一発で嵌まったし、間違いなく死ぬまで好きでいられる。

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青い車、ソナチネ

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『空の飛び方』を聴いていると、終盤でいつも北野武の『ソナチネ』を思い出す。
言うまでもなく「青い車」があるからだが、この映画からインスピレーションを受けて書いた…なんてことはないんだろうか。そんなことを考えてしまう程イメージが重なり合う。

歌詞の端々から漂ってくる死のイメージはもちろん、〈生きるということは 木々も水も火も同じことだと気づいたよ〉というフレーズが、映画の中で描かれる沖縄の森や雨、海、浜辺での花火や炎上する車に重なる。〈死〉と表裏一体の〈生〉のモチーフ。
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しかもこの曲の次、アルバムラストが「サンシャイン」だ。どこまで当たっているのか分からないけど、以前ネットでこの曲は火葬をモチーフにしてるという説を見て、それ以来そうとしか聞こえなくなってしまった。
〈許された季節〉〈夏の花〉、それと対になる〈寒い都会〉とか、沖縄の夏を連想させなくもない。
まぁ、どうとでも解釈できるのが歌詞なんだろうけど、でも草野マサムネが北野武をどう観たのかは少し気になる。全然観てなかったりして。
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安部公房「石の眼」

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1960年の作。記録芸術運動の影響が強いが、「飢餓同盟」ほどの魅力は感じられず。
ダム建設現場の人々とそれに絡んでくる政治の話。だけどちょっと未整理で読みにくい印象。公房らしいどんでん返しもあるにはあるけど、それまでの展開をあまり呑み込めないので驚きも少なかった。その後作品の核心というかテーマが登場人物の口から語られてしまうのもどうかと思う。解説にある通り過渡期の作品という印象。

この頃の公房の作品だと長編小説よりもその基になったルポルタージュのほうに強い魅力を感じてしまう。本作だったら「蜂之巣城騒動記」。4〜5年前に一度読んだきりだけどかなり面白かった。

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高木いくの「ひと夏 / 愛のはじまり」

イクノフのニューシングルがホームページで発売になった。

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「ひと夏」は思春期の女の子が抱く気持ちを歌っていて、こういう詩を描かせたら高木いくのの右に出る者はいない。相変わらず突き刺さってくるフレーズが散りばめられている。
「初恋」の夏バージョンとも言えそうでとても切なくていい。ピアノをバックに歌うシンプルなアレンジだが、先行してライブ会場で販売されていたCDRとは違ってコーラスが入っていて、これもまたいい。

「愛のはじまり」はアコギメインの曲で、この曲もコーラスアレンジがすごくいい。「風をおこそう」を思い起こすポジティブな歌。

CDが入っていた封筒には高木いくの商店のスタンプ、CDには一枚ずつサインがしてある。宝物。
ikunovshoten