Bert Jansch「The River Sessions」

バートのアルバムには名盤しかない。控えめに言っても水準以下の作品はゼロ。
ただ寂しいのは80年代以前のライブ盤が少ないこと。Pentangleを除くとMartin Jenkinsとの1枚があるだけ。

riversessions

でもこれさえあればいい、と思わせてくれるのが04年に発掘された『The River Sessions』。74年グラスゴーでの素晴らしすぎるライブ。

『L.A.Turnaround』リリース3ヶ月後なので、そこからの曲が多い。スタジオ版はLA録音でスティールギターが入ったりして、珍しくカントリーっぽいアレンジが多い。それはそれで大好きだけど、ギター1本で曲の良さがストレートに伝わってくるここでの演奏も嬉しい。
特に1曲目の「Build Another Band」は、『Santa Barbara Honeymoon』ではトロピカルなアレンジで、ちょっとオーバープロデュースな感じもするのでこっちのほうが好き。同じく次作からの「Dance Lady Dance」もシンプルなアレンジに軍配。

Pentangle時代からはバッキバキのフィンガーピッキングが冴えまくる「I’ve Got A Feeling」と、寂寥感がたまらなくいい「When I Get Home」の2曲。
アンコール前のラスト、「ちょっと早いけどクリスマスプレゼントだ」とMCされて始まる「In The Bleak Mid-Winter」も、冬のエディンバラの景色が目に浮かんでくるようで、聴衆の熱狂も凄い名演。


音質も文句なし。映像が残っていれば最高だけど贅沢は言わない。

All The Young Dudes

あまりにも訃報が立て続けに降ってきて、正直に言えばそれほど熱心に聴き込んでいた人達ではないけど、それでもこれから自分の好きな人達がどんどんあっちへ行っちゃうんだなと思うと悲しくなる。


8日に亡くなったOtis Clay。昔ラジオで聴いたこの曲が大好きだ。


Eaglesは聴かず嫌いみたいなところがあって、それこそ1stぐらいしか聴いたことがない。持ってるだけで聴いてないレコをこれから聴こうか。
こんなきっかけできちんと向き合うのも悲しい。遅すぎたよ。


Bowieを追っかけるようにDale Griffinまで逝ってしまった。
Mott The Hoopleは安いグラムの象徴みたいな『Live』のジャケットのせいで、聴くのに時間がかかった。でも聴いてみたら最高だったわけで、Whoと同じぐらい「All The Young Dudes」には救われた。
本当にね、25過ぎてまで生きてたくなかったし、生きているとは思わなかったし、今だって死に損なった感じは消えないし。

トーベ・ヤンソン「ニョロニョロのひみつ」

講談社文庫の新装版も『小さなトロールと大きな洪水』しか買わないうちに、ヤンソンさん生誕100周年記念カバーに変更されてしまって、どうせならボックスで欲しいなぁと思ってるうちになんだかんだ1年以上経ってしまったので、今度はそろそろ100周年カバーから新装版に戻るのかなぁと焦ったり。
好きな本を複数買いするのは嫌いじゃない。でも装丁替えのスパンが短いとつらいよ。

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『ムーミン谷の仲間たち』は後期の作品で、ここまで来るとムーミン童話よりヤンソンさんの他の小説に感触が近そう。(ほとんど未読なのです。すみません)
「ニョロニョロのひみつ」はパパが他の作品でもたまに見せる世捨て人願望で書かれた一編で、そのうえニョロニョロが出ずっぱりなので、ニョロニョロとパパ好きとしては堪らない。
確かに解説にもある通り「ピンぼけの失敗作」な感じはする。冗長で詰め込まれた要素を活かし切れてない。でもピンぼけなら読むたびにピント合わせを変えれば、そのたびに違う読みが出来る。だからそんなに悪い作品でもないと思う。

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本音を言えば最初の2ページだけあればその後はいらないくらい好き。パパの背中と水平線。もうそれだけでいい。

鈴木大介「最貧困女子」

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これもまた重い、貧困関連のノンフィクション。
制度の欠陥などを議論することは少なく、フィールドワークで収集した貧困当事者の声を紹介していく構成で、貧困の最下層にいる女の子達の可視化にはじゅうぶん成功してると思う。
〈貧困〉と一括りにしても100人いれば100通りの事情がある。そんな当たり前のことをあぶり出す。
それなりに恵まれてフツーに育ってきた人間の想像力なんて、それこそ貧困なものでしかないことを思い知らされる。

人間は極度に追いつめられると、思考のパースが上手くつけられなくなるというか、するべきことの優先順位が付けられなくなるものだと思う。しかも本書で扱われているような貧困層にある人達は初等教育を受ける機会すら奪われていて、日常的に虐待される環境にいることがほとんどだから、どうしても行動が場当たり的、衝動的になってしまう。自分の身を守るためには仕方ないことなのに、そのへんもまた無理解な批判の矛先にされやすい。
でもまだこのへんまでは、時間はかかっても理解は得られる、貧困な想像力の範囲内にある事柄だ。

著者が可視化を試みた最貧困女子の実情は本当に複雑でこんがらがっていて、長い間〈見えなくされてきた〉のも頷けてしまう。
著者自身が悲鳴を挙げている。読んでいても出口の見えなさが辛い。だからといって見ずに済ますことは〈悪〉だと著者は断言するし、自分もそう思う。
とにかく知って、憂鬱になって、何日も嫌な気持ちを引きずることだ。
それでもまだスタートラインに立てるのか疑問だし、立ったとしてもゴールは無いんだけど、でもとにかくいろんな人に読んでほしいと思った。

Tove Jansson「MOOMIN: The Complete Tove Jansson Comic Strip」

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ちくま文庫にムーミンコミックスが入った。

手軽に読めるし表紙も昔使ってた手帳に似てて可愛い。欲しい。でもコミックス版は原書で読んでこそな気もする。

コミックス版は原文もスウェーデン語じゃなくて英語なので、ヤンソンさんの言葉をそのまま読めるのが嬉しい。
日本語版で読んでる人にもオススメ。英語ならではの可愛さがあるし、いま手に入るハードカバーは装丁も綺麗。
英語も簡単。世界観もキャラクター設定も小説とは全然違っていて、読み比べると楽しい。
不可触民とは言わないまでも、小説ではきわどい役割を担っていたニョロニョロその他のキャラクターも、いい気な連中になっていて笑える。

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(Amazonは安いけど高確率でダメな梱包なのがイタイ)

ヴィム・ヴェンダース「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」@早稲田松竹

ヴェンダースとライとのそれまでの関係があってこそ出来た映画だろうし、キューバ出身の老ミュージシャン達がニューヨークを訪れて「憧れていた」と話すシーンにしても、底に沈められたものはいろいろあるんだろう。でも底を浚うよりとにかく何か弾きたくなる。

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長生きはしたくないが、楽器弾いてるじいちゃんばあちゃんは国籍楽器問わずみんな凄まじくカッコイイ。なにより楽しそうでこっちも楽しい。あんな風に歳を取るなら悪くないかもしれないと思ったりする。
ルーベンがギムナジウムで子どもたちに囲まれて楽しそうにピアノを弾くシーンが最高に好き。楽器が弾けると間違いなく人生は豊かになる。

綺麗なオスティナート(トゥンバオというそうな)の上でインプロ回し(デスカルガ)をする「Chanchullo」も好きなシーン。
アルバムには入ってないのが残念。…というか久しぶりに聴いたら結構好きな録音だ。音の回り込み加減もいい。アナログの再発買っとけばよかった。
もっとラテンを聴きたい。とうようさんの本も読みたい。勉強しないと。