フランソワ・トリュフォー「夜霧の恋人たち」@シネマブルースタジオ

シネマブルースタジオはいつ行っても観客が10人いるかいないかぐらい。
純粋な映画館とはちょっと違うけど、ゆったり35mmフィルム上映で映画を観るには意外な穴場だと思う。

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〈ヌーヴェル・ヴァーグ・前夜〉特集の「夜霧の恋人たち」を観た。
アントワーヌみたいな人間には親近感を覚える。だから監督のアントワーヌ(とクリスティーヌ)への視線が暖かいことが嬉しい。過去の自分みたいなものだから当然か。

いい意味での裏切りなんかもなく、自分がトリュフォーに期待する映画どおりの映画だった。何も考えず多幸感に浸って、なんて豪華なコントだろうと思いながら観ていた。
たぶんもうちょっとお客さんが入ってれば笑いも起きるんだろう。そこがブルースタジオの惜しいところではある。

ジャンスマ、成人式 – 夜の部@東京キネマ倶楽部

本格的に降ってきたので上野駅のアトレで時間を潰してから、また鶯谷へ。
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夜の部は2階席をとってみました。ステージを右側から眺められる良席。
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椅子も高級そうな感じ。ただ自分の席はなんだかグラグラしてた。

少し緊張感があった昼の部とは違って、客席のノリは夜の部のほうが良かったように思います。
何曲かセットリストが変わってればいいなと思ったものの、変更はなし。悩みに悩んで決めた曲順を簡単には変えられないよね。

セットリストは変わらなくても、MCは当然変わっていて、特に「抱きしめたい」の後(かアンコール前だったか)にイクノフが語ってくれた当時の心境には胸が痛くなるものがありました。

「抱きしめたい」が出来て、ジャンスマでやりたいことが見つかったと思ったんだけど、売れなかったんだよねー。それで、なんていうか、わたし、絶望しちゃったんだよね。
でも、今になって〈「抱きしめたい」がぼくのすべてでした〉とか、〈ジャンスマを擦り切れるほど聴いてアレンジの勉強しました〉とか言われるわけですよ、ゐさおちゃん!
だからねー、見えなかっただけでちゃんとひとりの心には届いてたんだなって。自分がいちばん数字に捉われるような人間になっちゃってたじゃんって。

それに対して、ゐさおちゃんがひとこと、「ひとりじゃないじゃん」。
もちろんひとりじゃありません。ちゃんと届いていたからこそ、今でもジャンスマを好きでいる人達が集まったわけで、もちろん自分もそのうちの1人です。

なんだかんだいっても、〈良いもの〉はちゃんと受け止められて残っていくと思います。何が〈良いもの〉かといえば、それはずっと残るもの、それ以外に無いように思います。
ただ、〈残る〉とはどういうことかというと、少し難しい。大ヒットしてそのまま一度も忘れられたことが無いような作品だってあるし、発表時には黙殺されても、数十年後に地球の反対側で〈再発見〉されたような作品もある。死後、カフカの作品は世界的に評価されますが、友人としてカフカの作品を世に出したマックス・ブロートは、生前はカフカなど問題にならないほど著名な〈作家〉だったにも関わらず、現代では〈カフカの紹介者〉として有名です。

だからなんというか、作品の評価なんか分かりはしないと。そういってしまえば全部終わりのようですが、本当にそう思います。
作品を世に問うという行為は、手紙をビンに詰めて海に流すようなもので、すぐに誰かが発見してくれるかもしれないし、何世紀か後のことになるかもしれない。
でも〈良いもの〉は絶対に残る。どれだけ大きな波や強い水圧に曝されても決して壊れないと思うのです。

それは自分がなにかを作るときのモチベーションでもあるし、好きなものを「好きだ」と言い続ける理由でもあります。
そんなことを再確認させてくれたイクノフの言葉であり、満員の客席でした。

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イクノフが抱えていたポピュラリティとのせめぎ合いについては、お土産CDに収録された『のほほん喫茶』でも、「自分を貫いたから今でも好きでいてくれるファンがいるんじゃないかな」と語られています。自分もまったくその通りだと思います。イクノフがイクノフであることを貫いたからこそ、ゐさおちゃんがゐさおちゃんを曲げなかったからこそ、ジャンスマがある。

あなたがた自身の幸福のために、それが絶対に必要じゃないかと思うから申上げるのです。もし私の通ったような道を通り過ぎた後なら致し方もないが、もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏潰すまで進まなければ駄目ですよ。――もっとも進んだってどう進んで好いか解らないのだから、何かにぶつかる所まで行くよりほかに仕方がないのです。

説明するまでもなく、『私の個人主義』の漱石の言葉ですが、まんま「翔べ!イカロス」です。
だから死ぬまで言い続けます。「ジャンスマが好きだ」と。

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お土産CD『ジャンスマ、成人式』トラックリスト。自分なりに作ってみました。

お土産CDには、てっきり「オオルリ」だけが収録されてるのかと思ったら、まるごと1枚『のほほん喫茶』仕立てでした。
これだけでも嬉しいのに、ゐさおちゃんの初期楽曲「まちぼうけ」を今のジャンスマで取り上げているというとんでもないサプライズつき!

この「まちぼうけ」、「夏の情景」ほどではないにしろ、はっぴいえんどが吉田ゐさおに与えた影響が伺えます。サウンド面でゐさお少年の心を動かしたのは細野さんでも大滝さんでもなく駒沢裕城さんのスティールだったのかもしれませんが、太田裕美さんが歌ってもしっくりくるような歌詞の世界観は、紛れもなく風街そのもの。
静岡のときもリクエストしそこなったけど、やっぱりJungle Smileの「空色のくれよん」が聴いてみたいとあらためて思いました。
成人を迎えて、いろんな制約から自由になったジャンスマなので、のんびりと期待しています。

ジャンスマ、成人式 – 昼の部@東京キネマ倶楽部

「再会」の次は「成人式」です。

まずは昼の部へ。寒さはそこまでではないものの、雪が降ってもおかしくないような空の色。
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少しレトロな看板がドーンと迎えてくれる東京キネマ倶楽部。
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鶯谷にこんなライブスペース(?)があるとは知らなかった。(ちゃんと休み取ってきたけど職場に近いので心臓に悪い)
とりあえずアクセスしやすいのはいいことだ。

お土産CDを貰って入場。内装のお洒落さに驚きつつ、とりあえず物販へ。今回は予算たっぷりなので遠慮しませんでした。
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17年目の『夏色シネマ』を思わせるパンフレット。装丁も中身も素敵です。

「流星スペクタクル」のCDも売ってる!「再会」のとき貰ったものはもったいなくて未開封のままだったので、これでやっといい音で聴けるしスマホにも入れられます。
先着でサインが貰えるとのことだったので『ジャンスマポップ』も買う。colezo!盤だけで何枚持ってるんだろう…。
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開演までステージ上の機材を見てました。
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各モニターのそばにはセットリストが置かれていたので、目に入らないように気をつけながら。
いま思えば終演後に撮ってくるんだった。

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Dubさんのブース。

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席はアリーナ2列目、イクノフのほぼ真ん前!静岡の時ははじっこだったのですごく嬉しい。

メンバーに続いてイクノフが登場。
1曲目は「片思い」。
当たり前だけどイクノフの声です。声が全然変わらない。完全に歌うことから離れてた時期もそれなりにあるはずなのに、本当にすごい。
簡単なMCに続いて、「同級生」「冒険(ロマン)」。

次はツイッターでリクエストが多かった曲ということで、「東京、さびしんぼ」。
これも大好きな曲なので嬉しい反面、スモークと逆光の中で歌うイクノフからは15年前とおなじ痛々しさすら感じられて、少しハラハラ。でも素晴らしかった。
次はゐさおちゃんのハーモニカがイントロを奏でて「白い恋人」。幸福感に満ちた曲なので、ママになったイクノフが歌っていると思うとすごく幸せな気持ちになってきました。
一転して絶望を歌った「翔べ!イカロス」ですが、なんというか、ごく普通にセットリストに溶け込んでいて、明るい曲にさえ感じられたのは少し意外でした。

テーブルが出てきてのほほんトーク。
このときイクノフが会場込みで自撮りした写真、絶対自分が写ってるはず…いや、イクノフが被って写ってないかも。ツイッターかどっかにアップしてくれないかなぁ。

再びメンバーを呼び込んで、「風をおこそう」。会場にコーラスを呼びかけるも最初は上手くいかず。
この曲、スタジオ版のアレンジならまだしも、ウクレレのコード弾き(しかも裏拍?)に呼びかけだけだと結構入りが難しい気が…。バンドが入ってきてからはレゲエっぽいアレンジでコーラスもしやすく、身体も自然に動きます。
デビュー曲からつい最近の曲へ移って「流星スペクタクル」。こんなに短かったっけ?ライブ用にサビ増やしてもいいのにね。それをしないからジャンスマなんだけどね。

またツイッターからのリクエストで、「チロ」「希望」と『あすなろ』から2曲。
「チロ」はいい曲だとは思うけど、いままで飼ってきた犬や猫のことをどうしても思い出してしまうので、聴くには結構勇気のいる曲でした。
でもイクノフがMCで、チロが長生きしたこと、なにより「この曲を通してチロを可愛がってくれてありがとう」と言ったのを聞いて、少し気分が楽になったというか、うちの犬さんや猫さんも思い出すことで喜んでくれるかもしれないな…と思えました。

あまりにも辛い名曲「希望」と、次の「抱きしめたい」はジャンスマの到達点です。
今回の「抱きしめたい」はギター2本で曲の骨格を剥き出しにしたようなアレンジで、歌詞の一節一節が刺さってきます。後半はバンドも入ってスタジオ版に近い演奏になりますが、この曲が持ってる力を見せつけられたような印象でした。
15年後にこんな演奏をぶつけてくるJungle Smileは本当にすごい。

「おなじ星」の前にイクノフが一言「みんな立たなかったね」。本当は1曲目から立ちたかったんだけど、客席に傾斜がないし、皆さん紙コップをどこに置いてるか分からないので立ち上がってこぼしちゃっても悪いし…とかいろいろ考えが先に来ちゃって立てませんでした。でも言い訳ですね。ごめんなさい。

メンバーは誰も引っこまず、ゐさおちゃんの「ここからアンコールです」の言葉でアンコール。だよね。ジャンスマに予定調和はいらない。
新曲の「オオルリ」は、いままでとははっきり違う曲調、それでいてちゃんとジャンスマの曲なのが新鮮です。
本当にどうでもいいけど、イントロのピアノリフが昔作った曲のリフとそっくりでニンマリしてました。

ドサ回り時代のエピソードを回想したあと、ゐさおちゃんのギター1本で「恐竜のヘリコプター」。
あらためて言うまでもないけど、大名曲。これが出発点なんだから本当に凄い。

ゐさおちゃんの粋な計らいで設けられた家族席。なんとそこから売り切れたそうな。
真面目な話、ベビーカー連れてると電車乗るなとか言われちゃう不寛容でふざけたご時世に、お子様も入場できるようにした配慮は素晴らしいと思います。
子供の泣き声や笑い声が聞こえてくるコンサートは空気があったかくて素敵でした。(ママに戻ったイクノフも見られたし)

余韻に浸りながら外に出ると、ポツポツと雨が。とりあえず上野駅まで歩いて、夜の部まで時間を潰そう。

クリストファー・ペティット「レディオ・オン」

あんまり家で映画観るのは気が進まない。部屋暗くしたり無音状態作ったりネコさんが入ってこないようにしたり塩味のポップコーン用意したりしないといけないからめんどくさい。
でも映画館に行く時間も作れないのでDVDを借りた。

radioon

ヴェンダースがプロデュース、モノクロ、ロードムービー、音楽は70年代後半のロックとニューウェーブ。
自分が好きな要素だけで作ったような映画だから期待して観たら、信じられないほどつまらなかった。素材がなんだろうと、ヘタクソな映画はヘタクソな映画でしかないことを再確認。

監督が自分の好きなものを陳列してるだけ。「これが好きなんだ」って語られるのは大抵楽しいものなのに、語り口次第でこんなに退屈になるのか。
とにかくテンポが悪い。ヴェンダースのロードムービー三部作が好きで仕方ない学生が撮った自主映画みたいな感じ。
リサ・クロイツァーの娘の名前がアリスなのもオマージュなんだろう。確かに一瞬だけニンマリするけど、口直しにヴェンダースを観たくなるんだからどうしようもない。

唯一の救いはスティングの出演シーン。「Three Steps To Heaven」を弾き語る姿が滅茶苦茶カッコイイ。
逆に言えばここの場面だけ完璧に浮いちゃってるんだけど。

エルマンノ・オルミ「緑はよみがえる」@早稲田松竹

文芸坐シネマテークの『時は止まりぬ』は途中で寝ちゃったので、少し不安もありつつ、早稲田松竹のエルマンノ・オルミ特集へ。
『木靴の樹』は時間が合わなかったので、諦めてラスト一本で『緑はよみがえる』を観る。

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雪に覆われた山中、イタリア軍の最前線。
敵の攻撃に怯え、殺し合うことの虚しさに疲弊しながら死んでいく兵隊たち。

前線に放り込まれた場合、まず破壊されるのは個人の人間性だろう。だから、兵隊が一人残らず人間性を保っていることに違和感を感じなくもなかった。
ただ、リアリティーは感じられなくても、なまじ人間性を保っているだけに一層悲惨ではある。

「私は階級を捨てて、尊厳を取り戻す」と言って命令に背いたり、部下が大量に命を落としたことに対して「私のせいだ」と自責したり。

軍の上層部は無茶な命令を一方的に送ってくるだけ。ここはどの国の軍隊も同じ。

描かれている状況は悲惨なのに、爆撃のシーンを除くと全編静かで、映像も綺麗。
特に夜の雪山は美しい。たまに姿を現す動物たちに、戦争(というか人間の営みすべて)の虚しさを感じた。

最後に監督から、彼に従軍体験を遺した父親へのメッセージが映し出される。
とにかく真摯で、直球の反戦映画。
観て楽しくなる作品ではないけど、こういう映画こそ、興行的にも作品的もちゃんと評価されてほしいと個人的には思う。

そういえば音楽がすごく良かった。サントラを売ってれば買ったのに。

鈴木清順「恐怖劇場アンバランス 木乃伊の恋」

『恐怖劇場アンバランス』の「木乃伊の恋」を再見。というかほとんど初見。
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13ぐらいの頃、『怪奇大作戦』の延長で観てはみたものの、極度のビビリなので埋められている定助を掘り起こそうとするシーンあたりで観るのを諦めた。
特に怖いシーンじゃなくても、農民が集団でいるだけで怖くなる。
前半は笑えないこともない。でもどこがどうとかじゃなくてあの雰囲気がダメだ。「お経ロック」も死ぬほど気味が悪い。

後半のほうがホラーっぽい作劇なのに、そのオーソドックスさが却って安心できる。渡辺美佐子はエロいし、浜村淳が「青い血の女」に続いて怪演。出てくる人間のテンションがみんな異常です。
そしてラスト、一瞬のワンカットが滅茶苦茶怖い。これで元々は青島さんの後説も無かったんだから…。やっぱり円谷プロはすごいもん作るよなぁ。

そもそも「監修:円谷英二、監督:鈴木清順」っていうクレジットの凄まじさよ。
20年以上後になって、『私が愛したウルトラセブン』で円谷英二を演じた鈴木清順はどんな心境だったんだろう。当時の雑誌にインタビューでも載ってないだろうか。

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それにしても…『怪奇』より先にブルーレイが出るなんて。
『怪奇大作戦』は特典の発掘に時間をかけてくれてるんだと思いたい。

藤子・F・不二雄ミュージアム

一年ちょっとぶりの藤子・F・不二雄ミュージアム。
目当ては開館5周年の原画展。今は第二期。
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撮影可能なのは嬉しい。でもそのぶん自分の眼でしっかり見ることをおろそかにしちゃったかもしれない。勿体ない。

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フライヤーやグッズでもプッシュされてる「ドラえもんだらけ」。時間SFとしても「セルフ仮面」と並んで相当巧みな一作だと思う。
まあそんなことは置いといてドラえもんの表情の豊かさを愉しむべし。

dorayakin
どら焼きのシズル感も素晴らしい「へやいっぱいの大どら焼き」から、驚愕するドラちゃん。

baibain
こっちもくりまんじゅうのシズル感がたまらない「バイバイン」。本当に旨そう。

doraloving
全コマ爆笑できる「好きでたまらニャイ」。恋するドラえもんは本当にかわいい。

allmyloving
連載も後半になると近所のネコさん達と普通に付き合うようになって、ここまで思い詰めることはなくなる。
まだ60年代のキャラクターを引きずってる初期のドラちゃんは魅力的だ。

inonaka
曲線が目を引く「たとえ胃のなか水のなか」。

mamisnewyear
『魔美』の「ずっこけお正月」が展示されてたのは予想外で嬉しかった。ジャイアンたちがゲスト出演してるから?

sfcider
展示とFシアターのあとはひろばで休憩。SFサイダーを飲んでみた。少し甘め。でも美味しい。

dorastew
今回のカフェはクリスマス限定メニューのシチュー、

wonderdog
ワンダユウさんの図柄が楽しいワンダードッグ、

ankipan
フレンチトースト de アンキパンと、

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原画展とクリスマスに合わせてドラえもんだらけのシルエットラテ。

原画展の第三期が始まったらまた来よう。