不滅の男

エンケン、ファッツ・ドミノ。
訃報続きで辛い。

でも音楽は永遠に遺る。
安らかに。

北野武「菊次郎の夏」@キネマ旬報シアター

北野映画の中でもいまいち食指が動かなかった『菊次郎の夏』を観る。

普通に良い映画だった。
でも北野武に〈普通に良い映画〉なんて求めてるわけでもない。

そしてここに来て遂に映像と音楽の力関係が逆転する。
あのテーマ曲じゃなかったら、結構退屈な映画だったんじゃないだろうか。
音楽に引っ張られて観てしまうけど、終盤の展開は間延びしてる気がする。

もともと既存の映画とはテンポが違う北野映画だが、本作の場合そこに快感はなくて退屈な場面も多い。
良かったのは競輪場の場面とか。

あとは殿が人前に出してあげたいパフォーマーがフィーチャーされてるシーンなんかも、リズムを悪いほうに壊してる。麿赤兒先生のシーンも同じ。
義太夫さんとらっきょさんにしても、これまでの映画であんまり使ってこなかったから「今度はお前らな」って感じが透けて見える。殿の優しさが自分にとってはちょっと邪魔だったり。
でもキヨシさんのシーンは最高。

『HANA-BI』と正反対なたけしと岸本加世子の夫婦にニンマリするだけで充分な映画だ。
桜橋の下を通過する艀とか、好きなシーンもいくつかあるけど、ここまで観客に媚びることもなかろうて。

Wilko Johnson@渋谷クラブクアトロ

ようやくウィルコに会えた。

14年の来日は、これで最後だからと頑張ってチケットも取ったのに、自分の体調が悪くて行けなかった。
なにしろ余命宣告までされている。遠からず死んでしまうんだから、もう二度とウィルコには会えないんだと思って諦めていた。

そこからの、本当に奇蹟としか言い様のない復活劇。
逝ってしまう人ばかりの中で、ウィルコは死の淵から戻ってきてくれた。とんでもない人だ。

ライブは…最高だった。
ソロは聴いてないアルバムも何枚かあるけど、基本はどの曲もシンプルでゴリゴリなロックンロール。
予習とかそういう下らないことは要らない。リフ、フィル、ベースが揃ったらあとは乗るだけ。

「Going Back Home」でやっとウィルコに撃たれた。嬉しかった。思わず笑いながら仰け反ってしまった。

ノーマン・ワットロイのベースも凄い。だいたい顔が凄い。
ポール・コゾフはチョーキングのときにガイラみたいな顔になるが、それに近いものがあった。
たまに弾きすぎて小節はみ出したりしてたけど、それがどうした。ロックンロールだ!

会える人には会えるうちに会っておかないといけない。
とにかく、Keep on Rockin’, Wilko!!

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北野武「HANA-BI」@キネマ旬報シアター

ここのところ不調で、観たい映画は山ほどあるのに一本も観に行けていない。
やっと見つけた隙間の時間にキネマ旬報シアターへ。
北野武『HANA-BI』。

再見だが、久しぶりなので良し。


駅を出たら寒かった。

『あの夏』と『ソナチネ』では饒舌すぎて映像から遊離していた久石譲の音楽が、ここでは完全に映像と一体化しているのが凄い。
(『キッズ・リターン』は好きじゃないので覚えてない)
本作のたけしは極端にセリフが少ないので、それも良かったのだろう。

『ソナチネ』だって死生観を扱ってはいたんだろうけど、それとは比較にならないほど『HANA-BI』が重量級の作品になっているのは、逸見さんが亡くなり、たけし自身も生死の淵を彷徨ってしまったからなのか。

『ソナチネ』では怖がりつつ死と戯れていた感すらあるが、本作にそういう刹那的な無邪気さは無い。

半身不随で刑事を退職した大杉漣は絵を描き始める。
ポジティブな事象であるはずなのに、画面には〈死に損なった〉〈死ねなかった〉〈死を諦めた〉ような虚無感が横たわっている。
それでもこんなに絵が描きたくなる映画はないけどね。(花屋のシーンは少ししつこいと思う)

主人公の名前が『その男』と対になってたり、作品自体『その男』のパラレルな続篇みたいだったり、それこそラストシーンは『ソナチネ』だったり、集大成的な色合いも濃い。

でも久しぶりに観直した結果、高田センセーの「カミさんへのラブレター」説がいちばん妥当なんではないかと。
西の奥さんが最後の最後に口にする「ありがとう」と「ごめんね」。
殿は奥さんにこれを伝えたいがために本作を作ったんじゃないかと。
だとしたらなんてカッコイイんだ。
(いやまあ、常人には想像できないほど泣かせてもきたんでしょうが)


キネマ旬報シアターも館内の展示が凝っていて愉しい。バックナンバーも読める。

今回は久しぶりのフィルム上映ということで、スタッフの方がお客さん達に映写機を見せて解説していた。
自分も待ち時間に映写室を見せて頂き、少しだけ雑談した。
映画好きな方とのおしゃべりは愉しい。
やっぱり名画座は愉しい。