安部公房「箱男」 – 無限遠の青

未読の本は増えるいっぽうなのに、また『箱男』を読んでいた。
疲れてるんだろか。
無限遠の青に惹かれているのだろう。


不必要に難しく考えるのを止めれば、この何冊ものノート(に見せかけた一冊のノート)は〈ぼく〉独りで書いたものだろう。
〈想像だが嘘ではない〉と彼も言っている。
医者や彼女との関係は、箱を被る前から続いているものだったに違いない。

Dはショパンの夢をみる。
いや、Dが〈ぼく〉の少年時代だったとしても何も差し支えない。親しみが増すだけだ。

最後の最後に〈ぼく〉は書く。

ある種の落書きは余白そのものなのだ。

落書きは註釈を呼ぶ、と読むことも出来る。本文中、数箇所に挿入された書き込みや別紙も、余白に呼ばれたものなのだろう。

〈ぼく〉は著者自身だという身も蓋もない解釈も、意外とこの小説を愉しく読ませてくれる。
書くこと、世界を構築することに耽溺する一人の作家の姿がそこには見える。