ホワイトアルバムのD面

去年『SGT』発売の際にジャイルズ・マーティンが言っていた通り、ホワイトアルバムも拡大盤が出る。
待ち遠しいような、それほどでもないような、微妙な気持ち。
イーシャーデモが良い音で聴けるのはもちろん嬉しい。

『Unsurpassed Demos』を売ったあとにこんなブートにも手を出してしまった)

ホワイトアルバムはオリジナルのステレオミックスが大好きなので、リミックスはたぶん2、3回聴いて終わりだろう。
あとは残りのスタジオアウトテイクをどれだけ楽しめるか。『SGT』よりは楽しめると思うけど、それでも何回も繰り返して聴くほどのものかどうか。

『SGT』は、結局ほとんど「Strawberry Fields Forever」絡みしか聴かなくなってしまった。
アウトテイクも聴き込めばいろいろ発見があるんだろうけど、そこまで耳良くないし、もともと好きな曲も少ないアルバムだし。

今回のDEではもうひとつ、ブルーレイにオリジナルステレオミックスのフラットトランスファーが収録されていないのが不満。
ま、オリジナルステレオミックスはそのうちまとまって配信されるんだろう、きっと。
と、そんな感じなのでまだ予約もしてない。HMVの40%オフキャンペーン待ち。


『SGT』もホワイトアルバムも構造は同じ、ってのは前に書いたが、そもそも『Please Please Me』だって、マーティンがバンドのライブを想定して曲を並べているから、実は1stだって同じだ。
バンドのイントロダクションがあって、いかにもコンサートのフィナーレらしい曲で終わる。
だから、最初のコンセプトアルバムは『Please Please Me』だと個人的には思う。『SGT』で目新しいのはコンセプト云々じゃなくて、「Reprise」があったことに尽きる。前例はいくらでもあったろうが、ビートルズほど影響力のあるバンドがやった、そのことが重要。

『SGT』は後付けのコンセプトに収まりきらない「A Day In The Life」があったおかげで、いろいろと深読み出来て愉しい。あれを“コンサートのアンコール曲”と解釈するのは、いくらなんでもつまらないと思う。
自分はコンサート全体が退役軍人ペパー氏の白昼夢だと解釈している。


レコードを深読みする愉しみなら、ホワイトアルバムのほうが上かもしれない。特にD面が好きだ。
D面は「Revolution 1」で始まるが、もともとこの曲と「Revolution 9」は繋がっていたのは有名な話。
そこで、「Honey Pie」「Savoy Truffle」「Cry Baby Cry」の間も通奏低音として「Revolution」が流れていると捉えてみると面白い。
こうすると「Can you take me back」は〈寄り道したけど「Revolution」に戻してくれないかい〉の意味を持つ。

ジョンの良心ともいうべき「Good Night」も、作者の意図を超えた意味を持ってしまう。
暴動そのものだった前曲に続いて流れる、ディズニーを模した音楽。
ほんのちょっと前に〈赤ちゃんはもっと泣いてお母さんを困らせなさい〉と、まるで暴動を煽るように歌ってたのに、今度はアメリカの保守中の保守に倣った曲調で、〈良い子はもう寝る時間だよ〉と歌っているわけだ。You didn’t see it.

たぶん、ジョンもマーティンも、終わりぐらいは綺麗に締めようと思ったか、単に他に置き場所がないからD面最後に持ってきたんだと思うが、「Revolution」の後に置かれたことで、曲が持つ意味がねじれてしまった。

たぶん探せばまだまだある。深読みは愉しい。

細野晴臣「Vu Jà Dé」

今頃になって細野さんの『Vu Jà Dé』にハマっている。
初めて聴いた時はピンと来なかったのだけど。


Disc1は近作の流れを汲むカバー集。
こっちもライブでこなれた曲ばかりで充分愉しいが、最近何度も聴き返してるのはDisc2のほう。


副題は〈Essay〉。
年代も幅広く、新曲からデモに手を加えたものまで収録されていて、『アーカイブス』第2弾といった趣。
どちらかといえば小品が多いのだけど、そこに込められたメロディやアレンジの豊かさに唸らされるばかり。
というか唸るほどの音楽的素養もないので、ただただ繰り返し聴くばかり。
たとえば1曲目の「洲崎パラダイス」にしても、サビのメロディの付け方が妙に耳に残ったり。
この曲を聴くと、細野さんと大滝さんで昭和30年代の東京を再訪するようなアルバムを作って欲しかったと思う。風街とは違う角度で。

セルフライナーノーツも勉強になるなる。
探究心と好奇心を失わずに歳をとりたいと心底思う。

松沢呉一「魔羅の肖像」

『秋葉原事件』の次は『家族喰い』を読むつもりだったが、流石にヘビーすぎるのでやめた。免疫力が下がる。

代わりにチンマンの本を読んでいた。
松沢さんの本だから、テキトーに読み流すつもりでいるとブン殴られる。かといって眉間に皺寄せて読む本でもなかろうて。
戦後の性科学研究の流れとか、前提知識がないと読みにくい部分もなくはない。
でもこれまた大著ながら名著。チンマンは奥深い。