佐々木昭一郎「ミンヨン 倍音の法則」

2014年の公開時、前売りまで買ったのに諸々の事情で観られず、その後も諸々の理由で観ずにいた作品。
はやい話が、いまの佐々木昭一郎の感性を観るのが恐かった。

80年代後半以降の佐々木昭一郎作品からは、『川の流れはバイオリンの音』あたりまで確実にあった神通力が信じられないほど消え失せている。
好きな作家だからこその酷評ということで監督には許してほしいのだが、『七色村』なんて観れたものじゃなかった。

そして悲しいことに、『ミンヨン』もやっぱりそうだった。
監督の演出はハマると凄いが、主人公に感情移入できない場合は致命的だ。最後まで置いてきぼりを食わされてしまう。

不思議でしょうがない。あれだけの感性を持っていた人が、どうして凡庸以下の作品しか創れなくなってしまったのか。
普通、どんなにダメになってもどこかに光るところは残るはずなのに。
時代性だろうか。

そういえば、佐々木の初期三部作は相当アメリカンニューシネマから影響を受けているはずなので、考察が読みたい。
誰か書いてくれないかな。

トーベ・ヤンソン「リス」

ヤンソンさんの短篇は好き嫌いがはっきり別れる。
「リス」は一行目を読んだ瞬間に好きになった。

クルーヴハルでの暮らしが臨場感たっぷりに描かれてるだけじゃなく、ヤンソンさんの他者との関係性に対する姿勢も窺える。
お互いを尊重して、近づきすぎす、遠ざけすぎない。それがたとえ一匹のリスであっても。
厳しさも温かさも兼ね備えた、他者の孤独をきちんと尊重する態度。

ムーミン谷の住人達みんなが持っている性質。だからムーミン谷に住みたいと思う。
とにかく静けさと波の音に充ちたこの短篇が大好きだ。

本多猪四郎「メカゴジラの逆襲」

前作と同等かそれ以上にスケールが小さい。
それでも重厚な印象だから本多監督と伊福部先生の力は偉大だ。

ストーリーもシンプルなぶん、ツッコミどころも少ない。全編を覆う暗いムードがいい。
社会に居場所の無い科学者の苦悩は、第一作に通じるモチーフだ。

本多監督最後の映画である。
本多猪四郎ほどの映画監督が、晩年は黒澤さんの補佐に就くだけで自分の作品を撮らなかったのは、ご本人は満足してたのかもしれないけど、ファンとしては残念だ。

北村龍平「ゴジラ FINAL WARS」

驚いた。
『ミレニアム』が最低最悪のゴジラ映画だと思ったら、その下がいたのだ。
始まって5分で耐えられなくなったので最後まで観てない。観る必要もない。
こんなものを本多・円谷両監督に捧げるな。
恥を知れ。

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ピーター・ボグタノヴィッチ「ペーパー・ムーン」

『都会のアリス』ほどではないにしろ、大好きなロードムービー。
いかにも映画狂いのアマチュアが撮ったようなヴェンダースの作品と比べると、なにもかもがプロフェッショナル過ぎて、そのぶん少し愛着が薄れる。
表層が似ているだけの作品を比べてどうこう言うのもナンセンスだが。

DVDだとNGテイクがいくつか観られる。おどけるテイタム・オニールが可愛い。

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J.D.サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」

無理矢理に言葉を捏ねくり回す空しさに疲れたので、これからは本当に有用性ゼロの感想文ばかりになっていくことでしょう。

『真夜中のカーボーイ』といえば、『ライ麦畑でつかまえて』。
社会に馴染めない人間と冬のニューヨーク。

正直に言ってピンと来ない小説だ。
初めて読んだとき、既にいい歳だったが、それが理由とも思えない。
10代の頃に読んでもピンと来なかったはず。反発を感じたかもしれない。
文章が汚いとかそういう理由じゃなくて、なんとなくホールデンが自殺に到らないことに納得いかない。

あと、ホールデンがニューヨークに出てくるまでが冗長。
これだけの長さが必要だったのか疑問に思う。

石川淳「虚構について」 – 雑感

疲れた。

たれでも承知してゐる通り、ある藝術作品がどんなによいかといふことを、それにふれたことのない他人にことばで傳へることはむつかしい。(略)
しかし、ありやうは、ある藝術作品から受けた感動を再現するとは、そんな傳達とか限界とかに氣をつかつて、該作品のまはりをうろうろすることではない。逆に、そんな程度の振幅にとどまる感動しかあたへないやうな作品ならば、そもそも大したしろものではなかつたといへる。

石川淳「虚構について」より。至言だ。

ブログのためにグチャグチャと言葉を捏ねくりまわしていると、あらためて作品の感想を言葉にするのは難しいと感じる。
簡単に言葉に出来ないからこそ、面白いし何回も鑑賞したくなるのであって、言葉にすればするほど作品の印象が全部ウソになっていくようで空しくなってきた。

だいたいブログなんて後で読み返すために書いてるようなもんなんだから、そもそも書く必要が無い。
鑑賞日と簡単な印象だけメモしとけば充分だ。
もう嘘を書くのはやめよう。