「現代思想 2019年11月号 反出生主義を考える」

基本的に、人にとって最上の幸せは生まれてこないことだと思う。
つまり人は皆不幸であり、出産は一種の暴力だ。
だからといって、自殺は肯定できるものではないと思うし、中絶についての考えもまとまらないままだ。

子供はみんな、〈最上の幸せ〉を逃してこの世に生まれてくるのだから、無償の愛を無条件に注がれるべきで、またそうすることが親の最低限の責任であり、社会の義務だと思う。

それでもやっぱり、「生まれてきたくなかった」と思ってしまう瞬間は(性格のせいもあるが)数限りなく訪れるわけで、自殺する勇気があれば…と思ってしまうこともある。

感情的にならずに〈反出生主義〉を考えてみたかったので、大学時代以来の『現代思想』なんぞを買ってみた。
毎晩眠りに就く前に、答えのない問いから何かを見出だせれば満足。

八千草薫さんの訃報

よくよく考えてみると、邦画黄金期の映画で八千草さんを観たのは『白夫人の妖恋』『ガス人間第一号』しかない。

『ガス人間』の八千草さんの美しさは、この世のものとも思えない。荒唐無稽なストーリーが、八千草さんの美貌一点で強固な説得力を持ってしまう。
間違いなく代表作の一つだろう。

他にも『男はつらいよ』のお千代さんとか、最近では『ディアドクター』のおばあちゃんとか、綺麗ななかにも愛嬌のある役柄が印象的。

まだ観たことのない作品がたくさんある。またスクリーンの中で八千草さんに会える。

ご冥福をお祈り致します。

寒河江弘さんの訃報

26日に寒河江弘さんが亡くなった。
しばらく模型誌を読んでないとはいえ、ショック。闘病なさってたことも知らなかった。


(『ホビージャパンEX 怪獣大進撃3』より)

寒河江さんの作例は、主にホビージャパンEXのものが印象に残っている。
映画から受けた熱をそのまま立体化したような、良い意味での荒々しさがある作品群。


(同じく『大進撃3』より、平成ガメラに参加する経緯を綴った文章)

怪獣熱が高じて現場にスタッフとして参加するところは酒井ゆうじさんと同じだ。当時はこんな人が結構いたような気がする。


(『大進撃4』より。本編より格好良いデストロイア)

『空気人形』のエンドクレジットで名前を見つけてちょっと嬉しかったなぁ。

ご冥福をお祈り致します。

V.A.「I Hear A New World; An Outer Space Music Fantasy By Joe Meek – The Pioneers Of Electronic Music」

無人島レコードの1枚、Joe Meekの『I Hear A New World』の拡大盤。

いちばんの目玉は、60年当時、ミークが構想した通りのミックス・曲順で『I Hear A New World』が収められていること。
(RPMが91年に再発したミックス・曲順のものもいままで通り収録されている)
ライナーによれば白レーベルのプロモ盤から収録されたようで、RPM盤と顕著にミックスが違うものもある。
個人的には91年盤に親しんでいるので、曲順への違和感はあるが、オリジナルミックスを聴けただけでこの再発の意義はある。

ディスク1の終盤と残りの2枚には、有名どころだとDaphne Oram、Stockhausen、Pierre Henryなんかの音源が収録されていて、『an anthology of noise & electronic music』シリーズのような感触。
いかにも電子音といった風情のピコピコ音楽が愉しい。

国内盤は輸入盤に帯が付いただけ。ライナーの和訳ぐらい付けてよ。そのために買ったんだから。

宮内ふじ乃「物語る絵 トゥール〈アシュバーナム〉のモーセ五書」

大学時代好きだった授業のひとつが、宮内ふじ乃先生の装飾写本を読む授業。

確か黙示録の註解書がメインで、聖書に明るくなくても、独特の色彩や怖いような可愛いような絵を見ていく作業は楽しかった。

その頃を思い出したくて買った本。トゥールのモーセ五書を授業で扱ったかどうかは覚えてない(いちばん印象的だったのはベアトゥス写本)が、これはこれで魅力的な写本である。

絵の読解が面白いのはもちろん、まえがきとあとがきには先生の人柄が滲み出ていて懐かしくなった。

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佐々木倫子「食卓の魔術師」

佐々木先生の初単行本にして、忘却シリーズの第一弾。

忘却シリーズ三編はもちろん面白いのだが、併録された「プラネタリウム通信」が、美人姉妹シリーズのパイロット版ぽい雰囲気もあって好き。
人間のちょっとイヤな部分が(生々しくならない程度に)描かれているあたり、作者の観察眼の鋭さが浮き彫りになっていると思う。

書き下ろしの「趣味の講座」は乗馬編。肩の力を抜いたエッセイ漫画も一級品。

遊佐未森「ハルモニオデオン」

遊佐さんのアルバムはまだ聴いてないのも結構あるが、今のところ一番好きなのは3rdアルバム『ハルモニオデオン』。

「山行きバス [道草ノススメ]」「暮れてゆく空は」を筆頭に、完成度の高いキャッチーな曲が並ぶ。
前作『空耳の丘』の骨組みはそのままに、アレンジやコーラスがより立体的になった印象。
特にコーラスワークは絶品で、ただでさえ透き通るような歌声が美しく交わるさまは圧巻。

外間隆史の作編曲能力は凄い。(遊佐さんと外間さんの関係は、小川美潮と板倉文を連想させる)
聴覚のご馳走だ。

ジャケットやブックレットも含めたアートワークも素晴らしいので、アナログで再発してほしい。

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