Donovan「The Hurdy Gurdy Man」

ブリティッシュフォーク、ブリティッシュロック、アシッドフォークと、自分の好きな音楽要素をすべて持ち合わせてるのがDonovan。
音楽的にも商業的にも成功した上、Beatlesに与えた影響だって小さくないだろうに、2005年のリマスター盤は国内未発売だったり、どこか過小評価されてる感が否めない。

一般に最高傑作といえば『A Gift From A Flower To A Garden』か『HMS Donovan』なんだろうが、自分は断然『The Hurdy Gurdy Man』。

Donovanを聴くきっかけは例によって佐々木昭一郎。
『紅い花』での「The River Song」はあまりにも印象的で、それ目当てでジャニスでCDを借りた。
いざ聴いてみればタイトル曲は滅茶苦茶カッコイイし、どの曲もキャッチーで捨て曲もなし。
「Tangier」にはBert Janschまで参加してる。
(Bertのギターが埋もれてミックスされてるのが惜しい)
すぐにアナログも買って聴き込んだ。いまでも宅録するときのリファレンスにする1枚。


2005年の英EMI盤はPeter Mewのリマスター。
これはこれで良い音なのだが、ノーノイズテクノロジーが効きすぎている気がする。
オリジナルはもう少しワサワサした音だったと思う。
(しばらくアナログは聴いてないので昔の印象だが)

この音傾向はBert Janschのカリスマレーベル時代のリマスター3枚も同じ。
綺麗なんだけど、どこか綺麗すぎて惜しい。

The Pentangle「The Albums」

夏に『Sgt. Pepper』があったからなのか、どことなく静かな今年の秋冬商戦。
Whoのシングルボックスと日本盤シングルがちょっと欲しいぐらいで、お財布には優しい。

ただ、国内発売されてないだけで、Cherry RedからPentangleのボックスが9月に出てた。
結成50周年記念。おめでとう。


ボックスはマット仕上げ。汚さないように。


中身は紙ジャケ。とはいえ輸入盤の紙ジャケなので推して知るべし。

ディスク個々のジャケはダメでも、ブックレットは読み応えあり。
67年から73年までのライブ、レコーディング一覧まで付いている。このへんはCastle盤のボックスにも付いてたのかもしれないが、自分は持ってないので比べられない。

Castle盤が4枚組だったのに対してこっちは7枚組。
アルバムごとにボーナストラックを詰め込んだ構成で、未発表曲は22曲。

まだ全部聴いてないが、ファーストのボーナスに収められた67年8月のセッションは凄い。
もう全然別のバンド。
リヴァーヴを効かせすぎたジャッキーのコーラスがバートのシャウトの後ろでゆらめいているところに、いきなり乱入する凶暴なエレキ。
まるでVelvet Underground。ヘタしたらWhoのファーストの影が見える。なるほどプロデュースはShel Talmyだったと変なところで納得。


それにしても絵になるバンドだ。ジャッキーの不良っぽさ最高。

全体的にCastle盤よりも音圧若干高め。でもいいリマスターだと思う。
『Solomon’s Seal』がオリジナルマスターからリマスタリングされるのは今回が初。

このボックスで今年の冬は愉しめる。いい買い物だった。

Accolade「Accolade」

BIG PINKレーベルの再発は厄介だ。
ジャケは最高なのに中身は一回聴けば充分、みたいなアルバムが多すぎる。なるほどずーっと再発されなかったことには理由があるわけで。
それでも10枚に1枚くらいは思いっきりツボなのもあったりするから厄介なのだ。

Accoladeとかいうイギリスのフォーク・ジャズ系バンド。
ジャケは微妙だが、〈ペンタングルとジェスロ・タルを合わせたような~〉なんて帯文を読んだら聴かないわけにもいかない。

確かに謳い文句通りだった。
演奏力を二回りくらい落としたペンタングルにフルートが入ってる。

なんというか、ペンタングルがいかにとんでもない連中だったかを思い知るためのアルバム。
だけどフィンガーピッキングのバキバキ具合と大味なストロークの対比は案外好きだったりする。
たまに聴きたくなりそう。

Nick Drake「Pink Moon」

最近ずっと聴いてる。
作品は作家とは切り離して考えるべきだと、基本的には思う。どんなにヤな奴が作ったって傑作は傑作。それは魔美のパパも言っている通り。

しかし、優れた作品に接するとそれを創った人についても知りたくなる。稀にそのせいで作品を以前程には愛せなくなったりもする。たとえばツェッペリンなんかがそれで、どうしてもジミー・ペイジが人間的に好きになれないので醒めた耳で聴くようになってしまった。
その一方で作品イコール作者と言える様な、人と作品を切り離して考える事が極端に難しい人もいる。ゴッホ然り、ブライアン・ウィルソン然り。

ニック・ドレイクはまさにそんな人だから気楽に聴き流すことは出来ない。そのぶん聴く機会も限られてしまうが、しかし作品に接すれば必ず何らかの感覚なり示唆なりを与えてくれる。

遺された3枚のアルバムはすべて名盤。そのなかでもやっぱりこの遺作は特別だ。

彼がギターを抱えて座っているのは真っ暗な死の淵だが、光が射す瞬間も折々ある。タイトル曲「Pink Moon」のピアノや「Things Behind The Sun」で長調に転調する瞬間の美しさ。しかしその光があまりに眩しい故に、彼のいる場所の暗さがより一層強調される。

「Pet Sounds」は孤独を慰めてくれる。本作も孤独を慰めてくれるが、その質が微妙に違う。前者が躁と鬱を絶えず行き来している不安定な光の美しさなら、本作は絶対的な暗闇の美しさを教えてくれる。