ブルース・シュピーゲル「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」@キネマ旬報シアター


(写真ヘタ)

ビル・エヴァンスのドキュメンタリー。
去年ぐらいの公開かと思ったら4年前の作品だった。もっと早く日本公開してくれても良かったのに。

べつにビル・エヴァンスだからって品行方正な人間だとは思ってなかったし、彼もまた多くのジャズミュージシャンと同じようにヤク中だったとして、悲しいけどそれも表現者のカルマだと思う。

だからなんというか酷い言い方だけど、エヴァンスの人生も典型的な破滅型の表現者のそれ。
そういう風に受け入れてきた。

でもやっぱり、字面だけでバイオを追うのと、肉親がカメラの前で語ってくれるのとでは重みが違う。
〈典型的な破滅型の天才〉じゃなくて、一人の不器用な人間としてのエヴァンスが生々しく立ち上がってくる。
陳腐な感想だけど、そんな良く出来たドキュメンタリー。

エヴァンスみたいな表現者の場合、生き方と作品は一体のようなものだから(チャック・イスラエルズの言葉を借りれば「音楽を聞けばすべてわかる」)、音楽的な面ももちろん取り上げてくれるが、それよりも彼の人間性に重点を置いた構成だった。

ポール・モチアンのインタビューは最晩年に撮られたものだと思うけど、すごく若々しい。
彼も亡くなってから8年経つ。早いなあ。

Benny Golson「Just Jazz! – The Complete Triple Play Stereo Sessions」

ジャケ買い。

ジャケットのメンツが『ブルースの真実』並みに凄まじいわりに、全く聞いたこともないタイトルなのでなんだろうと思った。
ただの企画盤だった。いやこれはこれでイノック・ライトみたいで面白いけども。
ジャケもそんな感じ。


左にポップス、右にジャズ、ステレオで聴くとスウィング。
思い付いてもやらないだろ、ってのを本当に作っちゃうところがステレオ黎明期の楽しさ。

実際に聴いたところで大して面白くもないけど、こういうのは好き。
いっそアナログ盤で欲しい。でも探すほどじゃない。

Herbie Mann & The Bill Evans Trio「Nirvana」

妙な組み合わせに惹かれて聴いてみた。
アトランティックっぽい大味な録音だなぁ…と思っていられたのも最初の数秒。なんだこの音は。
大味どころか、ピアノなんて完全に音割れしてる。


マスタリング以前に、録音の段階でダメだったらしく、その上ネットで調べてみるとマスターが消失(焼失?)してリミックスも出来ないらしい。
アルバムの内容自体は好きだったから悲しい。

特にエヴァンスが弾くサティ(ジムノペティ)は新鮮だ。マンのフルートが余計に感じられたりもするが、それもこの曲ぐらい。

しかしなんつーか、Herbie Mann絡みは面白いアルバムが多くて楽しい。
怖いジャズオヤジの皆さんに一段低く見られてたのも、解らなくはない。

でも演奏は気持ち良くて、新人を見る目もあったのに、何がいけなかったんだろう。それがいけなかったのか。

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Barre Phillips「Mountainscapes」

年末に借りたBarre Phillipsのアルバムがいまさら効いてきた。

bpmountanscapes

いかにもフリージャズな演奏が俯瞰気味の音像で中央に定位した周りを、アナログなシンセが飛び回る「Ⅰ」や「Ⅴ」が気持ちいい。
シンセの音色は丸いのに深めにリヴァーブをかけたミックスは冷たい感触で、確かに湿度の低い高山を思わせなくもないが、それよりは海の底。ジャケも錆びた船か倉庫の壁に見えてくる。
ベースメインの曲も勿論カッコイイけど、そっちも弓弾きの「Ⅶ」あたりはやっぱり海のイメージ。

関係ないけど『Mountainscapes』ってタイトルから貧困な想像力が連想するのはこのジャケ。
highplaces
これはこれでアコギの絡みが気持ちいいRichard CrandellとBill Bartelsのアルバム。

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ヴィム・ヴェンダース「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」@早稲田松竹

ヴェンダースとライとのそれまでの関係があってこそ出来た映画だろうし、キューバ出身の老ミュージシャン達がニューヨークを訪れて「憧れていた」と話すシーンにしても、底に沈められたものはいろいろあるんだろう。でも底を浚うよりとにかく何か弾きたくなる。

bvsc

長生きはしたくないが、楽器弾いてるじいちゃんばあちゃんは国籍楽器問わずみんな凄まじくカッコイイ。なにより楽しそうでこっちも楽しい。あんな風に歳を取るなら悪くないかもしれないと思ったりする。
ルーベンがギムナジウムで子どもたちに囲まれて楽しそうにピアノを弾くシーンが最高に好き。楽器が弾けると間違いなく人生は豊かになる。

綺麗なオスティナート(トゥンバオというそうな)の上でインプロ回し(デスカルガ)をする「Chanchullo」も好きなシーン。
アルバムには入ってないのが残念。…というか久しぶりに聴いたら結構好きな録音だ。音の回り込み加減もいい。アナログの再発買っとけばよかった。
もっとラテンを聴きたい。とうようさんの本も読みたい。勉強しないと。

レコードの経歴

中古レコードは美品に越したことはないと思ってたが、最近はそうでもない。
前の持ち主がレコードを大切にしていたことが窺えるような痕跡なら、味があってわりとオツだ。

percussionbittersweetlp
少し前にブログにも書いたMax Roach『Percussion Bitter Sweet』
じつはレーベルがA面B面逆に貼られているエラー盤。

reverse1
前の持ち主さんは分かりやすいように注意書きをレーベルに貼っていたらしい。

reverse2
内ジャケにも。

mmtpurple
『Magical Mystery Tour』のパープルキャピトル盤。
内ジャケに、鉛筆かなにかで邦題を書いた痕がある。「ストロフィールス・フォーエバー」「ベビーユアリッチマン」etc…。

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見開きジャケットを抱えながらレコードを聴いている男の子が目に浮かぶ。
売るときに頑張って消したんだろうけど、もったいない。
個人的にもレコードを集め始めた頃に買った1枚なので思い入れがある。

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Pete Townshend『Who Came First』のUS初回盤。

inner1
インナースリーブに発売当時の音楽雑誌のレビュー記事の切り抜きがびっしり貼ってある。
最初はもともとこういう仕様なのかと思った。

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同時期発売のジョンのソロ作のレビューも。マメな人だったんだな。

Max Roach「Percussion Bitter Sweet」

percussionbittersweetlp

1000円シリーズで再発されたインパルスのカタログのなかで真っ先に飛びついたのがこれ。
メンツが凄いので前から聴きたかったんだけど、予想通り予想の遥か上をいく格好良さ。
CDじゃつまらないのでアナログも買ってしまった。

ローチの演奏は文句なく格好いい。その上でドルフィーのアルトとバスクラがのたうち回るんだから堪りません。
曲の背後にある政治性云々は抜きにしても名演揃いだ。

その上で、改めてアビー・リンカーンの迫力ある歌に耳を傾ければ、そこに秘められた怒りや嘆きを感じることも出来る。
「Mendacity」の歌詞は今でも響く。それは悲しいことでもある。