矢野顕子「JAPANESE GIRL」

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アッコちゃんのファースト。名盤。写真は紙ジャケ。
レコで聴くときはA面ばっかり繰り返す。問答無用の名曲「気球に乗って」「電話線」を筆頭に、Little Featを従えて暴れ回るアッコちゃんが凄い。こんな女の子がいきなり現れたらフィートだってビビる。
聴いてるぶんにはポップで楽しいのに、リズムを取ろうとするとシンコペと変拍子の嵐に翻弄される。それがまた快感で癖になるからひっくり返さないで針を1曲目に戻す。
「クマ」なんて何百回練習しても演奏できないだろう。

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(2002年のリマスターは若干ドンシャリ気味)

B面もすごい。
「大いなる椎の木」は後々『いろはにこんぺいとう』でまとめられる73年のキャラメルママとのセッションから。
もしこのときのアルバムがキャンセルされず世に出ていたら、吉田美奈子、荒井由実、矢野顕子(鈴木晶子)が一気にデビューしていたわけで。
シュルレアリスム運動とかトキワ荘とか、才能が集中して一気に現れてくる状況は知るだけでも興奮させられて、せめて同時代に生きたかったと悔しくなる。
他の曲はムーンライダーズのメンバーとのセッション。あがたさんと一緒に歌いたくなる「丘を越えて」もリズムはやっぱり難しい。

B面で一番好きなのは「へこりぷたあ」。このダウナーな感触はアシッドフォーク以外のなにものでもない。
へんてこで意味不明な歌詞は、タイトルの「へこ」から性的な連想を呼び出すと途端にセックスの陶酔感を描写したものに変形して、Carole Kingの「I Feel The Earth Move」と同じ匂いを放つものになる。
モロに邦楽なアレンジもあって豊穣を祈る民俗祭祀すら想像させる。死の匂いを撒き散らす「クマ」と表裏をなす曲かもしれない。

それにしても。
矢野顕子は過小評価されすぎじゃないだろうか。
ティンパン周辺のミュージシャンの中では細野さんの次くらいにとんでもない人なのに、教授ばかりが別格扱いされているのは何故。
(清水ミチコもね。ダウンタウンでもウンナンでもなく一番凄いのは彼女なのに)

清水ミチコ「知識ゼロからの大人のピアノ超入門」

ちょっと前にキーボードを買ったので、教本を探してたところにこんな本を発見。

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バイエルでもメトードローズでもすぐ飽きることは目に見えているので、ありがたく買わせて頂いた。
まだ全然指が動かない。でも続けていれば弾けるようになることはギターでわかってるので、楽典も片手にのんびり続けていこうと思う。

…久しぶりに『バッタもん』を聴き直した。凄い。やっぱり天才だ。
こんな人がクラスにいてくれたら学校だって少しは愉しかったろうに。

風街レジェンド2015@東京国際フォーラム

21日の〈風街レジェンド2015〉に行った。

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公演発表の瞬間に、絶対に行くと決めた。
メンバーがすごいのはもちろん、やっぱり“はっぴいえんど”。
細野さんは何度か観たし、茂さんとの絡みもTINPANでこれからも観る機会はあるだろう。でも松本さんがドラムとなると…。
〈All Together Now〉が最後のチャンスだったんだろうと思いながらずっと生きてきた(その翌年生まれ)ので、今回はなにがなんでも行くしかない。
もちろん大瀧さんがいないのは寂しい。でも3人揃うことだけですでに奇蹟なのだ。

だから当日、『風街ろまん』のジャケットが映し出されたスクリーンが上がり、そこにあの3人が立っているのを目の当たりにした瞬間、本当に鳥肌が立った。(出来れば立ち上がりたかった)
一曲目は「夏なんです」。はっぴいえんどでいちばん好きな詩。写真で見る猫背とまったく同じ姿でドラムを叩く松本隆を生で観ている!!!!
途中少し不安定になったりするものの、逆に緊張感を感じさせていい。
次はかなりヘヴィになった「花いちもんめ」。オリジナルより良かったかもしれない。
そして「はいからはくち」のボーカルは大滝さんに代わって佐野元春。あらためて文字にすると豪華すぎて意味が分からない。
「ソロだ!」で松本さんのドラムソロ。凄い!

その後のセットリストはまさに生で観る『風街図鑑』。風街ばんども鉄壁。
まずは太田裕美「木綿のハンカチーフ」。裕美さんの曲は松本さんの歌謡曲仕事のなかでも、松田聖子と並んで特別な位置にあると思う。シングルだけじゃなくてアルバムも作り込まれてて名盤が多い。
それにしても、裕美さんって全然変わらない。なんであんなに可愛いんだろう。

原田真二「てぃーんずぶるーす」。てっきり作曲も茂さんだと思ってたけど編曲だけだった。ピアノを弾く姿はカッコイイが、「タイムトラベル」でサビを合唱するように会場をけしかけるのはちょっと。ああいうのは好きじゃない。ごめんね。

大橋純子、石川ひとみ、美勇士あたりはそれほど思い入れがないので平静を取り戻す時間。当たり前だけど歌が上手い人ってのはすごいなと。

「東京ららばい」を歌うのは中川翔子。しょこたんにも思い入れはない。でも結構アウェイな中で熱唱する姿は滅茶苦茶カッコイイと思った。好きなものを「好き」って言い続けてきたことの強さを見せつけてくれる。曲も好きなので文句なし。

再結成イモ欽トリオは再結成はっぴいえんどと同じくらいの奇蹟、かもしれない。ベタだけど笑わせてくれるし、これは聴くというより観る曲なんだなと思った。スターボーも再結成すれば良かったのに。

山下久美子「赤道小町ドキッ」、早見優「誘惑光線・クラッ!」。このへんはちょっと順番が曖昧。
シューベルト「冬の旅」の現代日本語訳を鈴木准テノール、河野紘子ピアノで。まったく毛色が違うとはいえ、あからさまに席を立つ人達にイラッ。

永井博さんのイラストを思い起こさせる情景がスクリーンに映し出されて、ここから予想外にして怒濤のナイアガラ・タイム!

ちゃんとチューニングのA音から始まる「君は天然色」。風街ばんどの音圧がまさにナイアガラ・サウンド。なんたってバンマスは井上鑑さんだ。
銀次さんと杉さんが並ぶと、銀次さんがギター低めのジョン・レノン立ち、杉さんがポール立ちに見えてきて無意味に嬉しくなる。

杉さんのMCにグッと来つつ、元春さんが再度登場して、トライアングルVol.1と2の「A面で恋をして」。
“シリアスな気持ち 横において”っていう歌詞が、大瀧さんを楽しく偲ぶ当日の雰囲気そのまま。

鈴木雅之は「Tシャツに口紅」と「冬のリヴィエラ」、渋い。
なによりも“ナイアガラの一員として”歌ってくれたことの喜び。

稲垣潤一が「バチェラー・ガール」と「恋するカレン」。
稲垣さんも声が変わらない。「カレン」の歌詞は正直言ってそんなに好きじゃないけど、歌の説得力に持っていかれた。

ナイアガラタイムが終わって、次は誰かと思ったら、摩天楼のヒロイン、南佳孝!
もちろん「スローなブギにしてくれ (I Want You)」。演奏も歌もコクがあって最高。これもスタジオ版より良かったかもしれない。
佳孝さんが茂さんを呼び込んで「ソバカスのある少女」。地味だけど嬉しい選曲。立夫さんのドラムも美味。ティンパンよりもキャラメルって呼びたい気分。

続いて茂さんのソロ「砂の女」。松原正樹、今剛と3人でギターバトル。凄かったよ。椅子揺らしすぎて隣の人は迷惑だったかもしれないけど、圧巻のグルーヴ。ホントにギター弾きたくなる演奏。

余韻に浸っていると、スクリーンには「しらけちまうぜ」の歌詞が! 客席で一番早く拍手した自信があります。
忠さんもカムバックしてからどんどん渋くてダンディになってる。滅茶苦茶カッコイイ。ここでも立夫さんのドラムが最高。
(スタジオ版のエンディングでシンバルを連打してピシッと止めるところも、曲の主人公が背中を向けた瞬間を表してるようで最高にカッコイイ)
忠さんは意外にも1曲だけ。もったいないよー。「流星都市」とか、どうせなら「暗い日曜日」でも演ってくれたら面白かったのに。

スクリーンにでっかく「矢野顕子」! 別格。ティンパンタイムだったのか。
アッコちゃんが歌うならはっぴいえんどか細野さん絡みの曲かと思ってたら、アグネスの「想い出の散歩道」と「ポケットいっぱいの秘密」だった。
「想い出の散歩道」は『風街図鑑』で聴いて本当に好きになった名曲で、今回もとびきりの名演。次のアルバムにでも入れてくれないかな。
「ポケットいっぱいの秘密」はいつも通りのアッコちゃんというか、ブッ飛んだジャズアレンジが最高。原曲のメロディの良さは消えない。そこは筒美京平さんの凄さでもある。

アッコちゃんと来たらミナちゃんだ。
美奈子のほうが何を歌うのか予想がつかなかったけど、薬師丸ひろ子「Woman “Wの悲劇”より」と松田聖子「ガラスの林檎」。
あまりにも意表を突きすぎ。そして歌が凄すぎ。神懸かってるとしか言いようがない。
どうせならター坊とアッコちゃん美奈子のティンパンのディーヴァ3人で、75〜76年頃の曲を演ってほしかった。贅沢言い出すとキリがない。

風街ばんどの演奏で「カナリア諸島にて」と「スピーチ・バルーン」。『NIAGARA SONG BOOK』な趣が嬉しい。
(演奏とは関係ないが、21日はスクリーンの映像とテロップの切り替えがイマイチでそこが少し残念。)

一息入れてスクリーンに「卒業」の歌詞。というか歌詞が映し出されるだけで観客がどよめくってのもよく考えると凄い。そんな曲だけで4時間。
斉藤由貴は鬼気迫るというと変だけど、なんだか神々しくてひたすら怖いぐらい綺麗だった。「初戀」も歌って欲しかったなぁ。

EPOは「September」。演奏も最高であらためて良い曲だなぁと。彼女については全然知らないのでアルバムを借りよう。

裕美さん再登場で「さらばシベリア鉄道」。なんとなく終わりが近いことを感じさせる。
それにしても裕美さんは可愛い。それしか言ってない気もするけど。友達でも従姉妹でも彼女でも奥さんでも不倫相手でも母親でもいいなぁと思えるのは香川京子さんと裕美さんだけ。

で「ルビーの指環」。正直言ってピンと来ない曲なんだけど、寺尾聦は絵に描いたようなダンディで格好良かった。なるほどこれが寺尾聦かと思った。

最後は再びはっぴいえんどで、「驟雨の街」。
イントロで細野さんのマイクがオフになってるというアクシデントはあったものの、淡々と演奏を進める3人にもう少しで泣きそうになった。(涙腺が硬直してるので泣けない)

細野さんのMC「はっぴいえんどって地味だよね」。笑ったけど、メインストリームではないところでこれだけのものを作ってきたことへの矜持が垣間見えた気もした。「はっぴいえんどは最後まで天の邪鬼なんだよ、悪い?」と。

その細野さんが柄にもなく全員を呼び込んで、「風をあつめて」。
アッコちゃんと裕美さんが楽しそうにしててこっちまで楽しくなったり、忠さんと美奈子さんが並んでてティンパンのツアー映像を思い出したり。思わず歌い出す。至福の時間。

最後に松本さんの挨拶。ちょっと泣きそうになってたようにも見えた。どうしても尖ってて不敵なイメージがあるからちょっと意外だった。
とか言いつつこっちも泣きそうになってたんだけど。(涙腺が硬直してるので泣けない)

客電が上がると、「スピーチ・バルーン」。余韻。
ライブ中、ここに大瀧さんがいたらと何度も考えたし、これからも何度も考えると思う。
でも〈いない〉ことによって〈いる〉ことはすごく大瀧さんらしいし、多分ご本人もムフフと笑っていることでしょう。
〈終わり〉は〈始まり〉なのだ。大瀧さんは風を起こして松本隆をけしかけただけで、充分満足してるはず。

kazemachi

矢野顕子、忌野清志郎をうたうツアー guest 清水ミチコ@渋谷公会堂

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矢野顕子、忌野清志郎をうたうツアー最終日@渋谷公会堂。
清志郎さんの35周年コンサートでの「ひとつだけ」の映像からスタート。このときの清志郎さんは格好良すぎて、何度観てもアッコちゃんと同じように「素敵。」と思ってしまう。

「帰れない二人」は陽水役をミッちゃん、清志郎役をアッコちゃんという役割分担(?)で演奏。MCのせいもあって笑えるんだけど、なんだかジーンとしてしまう。
「スローバラード」の歌い出しでは本当に清志郎が歌っているような錯覚に陥った。

アッコちゃん単独の曲では「毎日がブランニューデイ」が、清志郎さんの優しさを伝えてくれるようで気持ちよかった。

「けんかでデート」の映像のあと、アンコール。HISの名曲「セラピー」。
そしてふたたびミッちゃん登場。圧巻の「ひとつだけ」。憑依してると言えるぐらいそっくりだけど、やっぱりそれもちょっと違って、清志郎への愛情を込めて楽しそうに“物真似してる”ってほうがしっくりくる。笑えるような泣けるような不思議な感情と、確かに清志郎はここにいる!って会場全体の思いが混ざり合った至福の時間だった。
最後にミッちゃんが叫んだ「愛してます!」をそのまま、アッコちゃん、ミッちゃん、清志郎さんに返したい。本当にありがとう。