「DVD ウルトラマンティガ Vol.10」

実相寺監督の2本を観たくて『ティガ』を借りる。

本放送当時は10歳だった。TVで観ることが出来たウルトラシリーズは『グレート』の再放送と、あとは『ウルトラマンM730』(懐かしい。いま唐突に思い出した)ぐらい。そんな世代。
それでも『Q』~『セブン』は好きだった(逆に言えば第一期ウルトラ以外は全く評価していなかった)から、『ティガ』も第1話は期待と不安半々で観た。

確かゴルザはカッコイイと思ったはず。いかにもウルトラ怪獣っぽいし。
でも特撮のVTRっぽさと音声バランスの悪さ(低域が弱く感じた)、ヘタな出演者etc、ダメな部分ばっかり目についてしまって、たぶんそれっきり。

友達のお父さんだったか、わざわざ会社の半休を取ってTVの前で正座して観たのにガッカリした、なんて言ってたのを覚えている。

番組が中盤以降、マニア層を惹き付けて盛り上がっていったのも「宇宙船」や「ホビージャパン」で知ってはいたものの、わざわざ観る気にはならなかった。

だから実相寺監督の2本も、気づいたら放送が終わっていて悔しい思いをした。(その反省で「ウルトラの星」はちゃんと観た)

「花」は「空の贈り物」の正統なリメイクといった感じ。ちゃんと梶井基次郎が引用されるのは嬉しい。三輪ひとみの出番が思ったほど多くなくて残念。そのわりにワンカットワンカットがキッチリ印象に残ってるから流石だが。
あと川地民夫が出ててビックリ。当時もう『ガッパ』は観てたけど気付かなかった。

「夢」はゲスト出演者が豪華で楽しい。浅野忠信は若いし、寺田農はいかにもな感じ。
少し冗長な感じもしたが、実相寺監督のコメディは嫌いになれない。

川崎監督の「拝啓ウルトラマン様」もそこそこ面白かった。相手が宇宙人じゃないだけで、ちょっと「悪魔と天使の間に…」にプロットが似てる。
レナとダイゴの雰囲気がイイ感じだが、あれは最終回への伏線なんだろうか。

CG合成はいま観てもイマイチだが、東宝ビルトにセット組んでフィルム撮りしてるだけで豪華だなぁと思えるから不思議だ。

致命的なのは怪獣の魅力の無さ。デザイン画はカッコイイ怪獣も多いけど(昔ムックかなんかで見た)、殺陣のせいでどの怪獣も同じに見えてくる。
極論だが、〈プロのスーツアクター〉はヒーローや怪獣の個性を殺すことしかしてないと思う。

「DVD シルバー仮面 Vol.1」

『ミラーマン』の次は『シルバー仮面』。
DVD…これ本当にデジタルウルトラプロジェクトと同じスタッフが色補正したの…?原版の状態が悪ければどうしようもないか。

実相寺監督の2本は再見。特に第1話は傑作だと思うけど、自分が子供だったとして、来週も観ようとはなかなか思わないとも思う。
第2話も悪くはないが凡作。

実相寺・佐々木コンビはフォーマットを作っただけで、『シルバー仮面』は実質、市川森一と上原正三の作品と言ったほうがいい気がする。

特に市川森一はノッている。

第4話なんて大傑作だ。「私も科学者の端くれです。宇宙人の脅しになんか屈しません」と言って兄妹に協力の意志を見せながら、ラストでは「私だって春日博士みたいになりたかったんですよ」、そう言いながら研究書類や春日博士の肖像画まで(!)燃やしてしまう湯浅博士。

子供を宇宙人に拐われたんだから、湯浅博士の心変わりを責めるわけにはいかない。
でも本当にそうなのか?それでも科学者の良心を全うするべきじゃなかったのか?
人間の心の脆さを描いて、答えが出ない問いを発してエンディング。

市川森一の作家性が全開。
市川は『ウルトラマン大全集2』(講談社)の座談会でも、『シルバー仮面』に込められた寓意に惚れ込んでしまってやり尽くした、だから『ウルトラマンA』のときは脱け殻だった、と言っていて、本作や第9話を観るとそれはよく解る。

『シルバー仮面』はまさに『怪奇大作戦』の延長線上にある作品で、初期のウルトラ三部作では怪獣の姿を借りていた異端者が、科学犯罪者を経て本作では主人公になった。

〈科学を悪用して社会に復讐するもの〉を描くのが『怪奇』だったが、科学が〈悪用〉されているかどうかを判断するのは結局〈社会〉である。
宇宙人の存在すら信じられていない〈社会〉で、科学の〈平和利用〉を目標としながら、それでいて他人を巻き添えにして流浪する兄妹は、『怪奇』の犯罪者たちと紙一重のところにいる。

社会から排除される運命が定められている人間達が主人公とくれば、市川森一が乗らないわけがない。

上原正三ほどには『怪奇』の犯罪者たちに自分を託せなかった市川森一が、遂に開花したのが『シルバー仮面』だったのだろう。

実相寺昭雄特撮オールナイト第2夜@新文芸坐

実相寺昭雄特撮オールナイト、第2夜。

『怪奇大作戦』を映画館で観られるんだから、迷う理由もない。
しかも仕事終わりじゃないから寝る心配もない。

まずは樋口尚文とアンヌ、三輪ひとみさんでトークショー。
トークの内容は置いといて、三輪さんとアンヌの綺麗なこと(アンヌは古稀らしい。嘘だろう〉。
三輪さんは表現も話し方も笑い方も素敵な人だった。でも出演作はひょっとしたら一本も観てないかもしれない。(子供の頃から『宇宙船』なんかで見ては綺麗な人だなぁと思ってたのに、出てるのがホラーばかりで怖くて観られなかったんです。ごめんなさい)

途中から中堀正夫さんも加わって、カメラマンから見た実相寺監督が語られる。でも技術的な話は少なくて、監督の人柄を偲ばせる楽しい話ばかり。
(フィルモグラフィによれば『幻の光』も中堀さんの撮影…個人的な悦び!)

他にも、円谷プロと成田亨先生の確執に関するいい話とか、『セブン』12話を解禁するなら今年しかないだろうって話とか。アンヌが語るのは予想外の話ばかりで楽しい。

12話は、問題は解決しているし出そうと思えば出せる、けど各所が遠慮しあってる(樋口さんの言葉を借りれば「非常に日本的な状況」)だけらしい。
あとはファンの後押しだけだよ、ということで盛り上げてくれるアンヌ隊員。
そう言われるともうすぐなんだろうな、って気持ちにこちらもなってくる。

中堀さんによれば、レストア済みの12話は全エピソード中でいちばん綺麗だそうだ。フィルムの劣化が少ないからだろう。嬉しいけどちょっと複雑だ。

で、『怪奇大作戦』。
4作とも何十回と観てるが、スクリーンで観るとやっぱり印象が違う。まったく粗の見えない作り込みの細かさは完全に35mmの映画並み。

実相寺演出ならではの細かい仕草によるボケもよく判る。
京都篇はアフレコじゃなくて同録だから、映画館のほうがセリフも聞き取りやすいし、なによりスクリーンが似合う。

ただ、今回の上映素材は(たぶん)DVDと同じ疑似ステレオだったようで、そこだけは不満。京都篇は特にリミックス作業で付け加えられたアンビエントノイズと、オリジナル音声との剥離が目立つ。

音響設計にも徹底的にこだわる実相寺昭雄の特集なんだから、第3夜ではぜひオリジナル音声で再上映してほしい。

次は『シルバー仮面』から5本。
CSで何本か観たことがある程度だったから新鮮。兄弟の絆を軸にした暑苦しい設定は苦手だが、シリアスなのに笑いが漏れるのは映画館ならでは。
実相寺演出は1本だけで、あとは大木淳や佐藤静夫が演出したエピソード。当時の日本現代企画周辺の尖りっぷりがビンビンに伝わってくる。

ただ、元を辿ればその尖った感性のスタッフ達も円谷プロにいたわけで、次の『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』なんかも併せて観ると、逆説的に金城哲夫という人の凄さが感じられる。


(第3次怪獣ブームの熱は感じられる。でもそれだけ。新撮カットや再録主題歌のショボさが悲しい)

大島組にいた左翼系の人達から、TBSの飯島監督や実相寺監督みたいな個性の強いディレクター陣、東宝から来た活動屋まで、職人気質だろうが作家性が強かろうが、とにかく好き勝手にやらせて、なおかつ壊れない世界観を作ってしまった。

巨大ヒーローもののフォーマットを『ウルトラマン』一本で確立してしまったのと同時に、すでにその中でアンチテーゼもパロディも批判も行ってしまった。
後になって大江健三郎がする批判や、お笑いでネタにされるようなお約束の揶揄なんか、全部自分達でやっちゃってたのだ。
これはとんでもないことだと改めて思う。

そしてやっぱり、金城哲夫は宮沢賢治だ、との思いを強くする。
唐突だが、理想を追い求める強さと繊細さ、場を作る能力や、独特の宇宙観・生命観に、似通ったものを感じてしまうのだ。

実相寺昭雄オールナイトだったのに、早朝の池袋をブラブラしながら考えたのはそんなことだったりする。

「DVD 怪奇大作戦」

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『怪奇大作戦』は円谷プロ作品で一番好きだ。いつ観てもひたすら圧倒される。
初期の円谷作品はどれも傑作揃いだが、「怪奇」はその終着点にして最高峰だ。実相寺監督曰く「ウルトラシリーズの間に咲いた徒花」(若干違うかもしれない)、まさにその通りだと思う。
作り手の熱気が充満している。ただ「面白いものを作ろう」という熱気。もはや執念に近い。尋常じゃない熱だ。作り手の空気は間違いなくフィルムに反映する。黒澤なんか最もたるものだろう。今のTV、映画には殆どみられない、プロとしての志の高さ。面白くないはずがない!

『怪奇』のDVDは、最初LDと同じビームから出るという説が根強かった(ように思う)。ということは『ウルトラ』並みのリマスターは望めないわけで、少々残念に思いながらとりあえずリリースさえされれば…と思っていた。
そこにあっさり、「デジタルウルトラ」レーベルから発売が発表されたので、とにかく狂喜して発売を待ち望んだ。
…待ち望んだのだが、当時高校生だった自分には財政的に結構キツいものがあった。結局vol.3までは買ったものの、vol.4以降は「そのうち買えばいいや」と見送ってしまった。LDと違って、そう簡単に廃盤にはならないと思ったのだ。「狂鬼人間」はしっかり未収録だし。
ところが、なぜだか知らないがデジタルウルトラ関連では『怪奇』だけが廉価版もボックス版も発売されず廃盤になってしまった。vol.6に至ってはかなりのプレミアが付いてやがる。後悔した。とりあえずvol.4と5は押さえようと思ったが、これも結構高くなっている。それなりの値段を払った途端に廉価版が出たりしたらヤだしなあ…と、8年経ってもグジグジ悩んでいたのだが、アマのマケプレに1000円以下で出品されているのを発見、即購入。

…やっぱり素晴らしい。ひたすら素晴らしい。これが廃盤なんておかしいよ。『Q』のカラーライズもいいけど、『怪奇大作戦』のブルーレイ化を熱望する次第です。