是枝裕和「万引き家族」@キネマ旬報シアター

映画館に行く気力すら無く、映画を一本おしまいまで観る集中力すら無い時期が一年ぐらい続いていた。
最近ようやく復調してきたので、やっと『万引き家族』を観ることが出来た。

リリー・フランキーが出てくる邦画はもういいよって感じだが、監督と相性がいいんだから仕方ない。
安藤サクラが凄い。是枝作品で子供を差し置いて大人が一番印象に残ることってなかなか無い。
決してハッピーエンドではないけど、面会室で彼女が放つ「楽しかったからさ」っていうセリフに救われた気になる。

とはいっても一番好きなシーンは、髪を切ったじゅりが〈りん〉になって、亜紀と一緒に鏡台に向かうシーン。

この国に蔓延する〈家族はかくあらねばならない〉という数々の偏狭かつ胡散臭い思考への、もっと言えば伝統的(とされている)家制度を盲目的にありがたがるような人々への、鮮やかなカウンターのような映画。
少なくとも自分はそのように捉えた。血縁がなんだっていうんだ。

細野さんの音楽もいい。目立ちすぎず、それでいてグリッサンドがずっと耳に残る。
パンフレットが売り切れだったのが悲しい。

余談。
実は本作のエキストラ募集に応募していて、体調を崩さなければ商店街の客か警官の役で出演していたはずだった。
インフルエンザだったから仕方ないのだけど、出たかった。
一瞬でも自分が映っている作品がパルムドールだなんて、夢みたいな話じゃありませんか。
体調管理が一番です。

是枝裕和「そして父になる」@シネマブルースタジオ

キャストに魅力を感じなくて封切時は観なかった『そして父になる』。
その後もなかなか観る機会が無くて、今回が初見。
初めて行ったシネマブルースタジオは心配になるほど空いていた。

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いつもながら子どもを撮るのが上手いなぁとは思う。でもあまり印象に残ってるシーンが無い。風吹ジュンが出てくる場面ぐらいか。
子どもの取り違えは主題のようでそうでもない。父親として揺れ動く主人公を描くための仕掛け、ぐらいの印象。
でも肝心の福山雅治に阿部寛ほどの魅力が無いのがツライ。
駄作とはいわないけど、是枝裕和はこんなもんじゃないだろうと思う。

是枝裕和「海よりもまだ深く」@丸の内ピカデリー

映画の日。有楽町へ。

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タイトルの由来なんかも含めて、『歩いても 歩いても』の変奏のような映画だ。主人公の名前も同じ、ほぼ一日だけを舞台にしているのも同じ、家庭内に死者が大きな影を落としているのも同じ。二作とも監督の個人的な経験に依るところが大きいんだと思う。

そうはいっても二番煎じではない。というか、実際に自分や家族のことを重ね合わせて観てしまったぶん、『海よりもまだ深く』のほうが思いっきり刺さってくる。「なりたい大人に簡単になれるなんて思うなよ」って阿部ちゃんのセリフが共感できるし重いし。
監督の言葉通り、観た後の余韻が成瀬っぽい。

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もちろんめちゃくちゃ重い映画ってわけでもない。場内に共感を含んだ笑いが何度も起こって(これも『歩いても』と同じ)、映画館で観て良かったと思える。

今回も寺島進さんが欠席なのが寂しいが、聡美さんと樹木希林の母娘は本当に絶品だ。おかげで阿部ちゃんのダメ男ぶりも一層際立つ。
ただ、是枝作品にしては音楽が印象に残らなかったのが残念。ハナレグミも嫌いじゃないけど、ちょっと弱い。

でもやっぱり傑作。たぶんあと二回ぐらい観る。

是枝裕和「海街diary」@キネマ旬報シアター

今年は悲しくなるぐらい映画を観ていない。でも『海街diary』は3回目。
せっかくキネマ旬報シアターが是枝監督特集を組んでくれたのに、『空気人形』は時間が合わなくて残念。

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ちゃんとした〈大人〉と、ちゃんとした〈子供〉がいるのが是枝裕和の映画なのだなといつも思う。
そこがいつも小津を連想してしまう由縁。原節子さんの訃報があったから、今回は余計に『麥秋』が透けて見える。
この映画の綾瀬はるかは、確かに昭和の女優のような雰囲気もある。ただ、原節子というより三宅邦子だ。佳乃や千佳を叱るところなんかまさにそんな感じ。
また鎌倉に行こう。

「海街diary」再訪

平日だけど休日。晴天。
早稲田松竹でベルトルッチ2本立てを観てから新宿に行って『ラブ&ピース』を観る…
予定だったが気がつくと日劇にいた。

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2度目の『海街diary』を観て外に出たら快晴。居ても立ってもいられなくなってそのまま鎌倉へ。

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江ノ電の鎌倉駅にも『海街』のポスターが。

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すごい風と波音。映画の中の静かな海とは違ったが、気持ち良かった。

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本当に雲一つない空。

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ロケ地っぽい場所を探そうかとも思ったが無粋な気がしてやめた。

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余生はこんな街で過ごしたい。

是枝裕和「海街diary」@TOHOシネマズ日劇

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原作を知らないので映画化云々を聞いてもピンと来なかったけど、是枝監督にこのキャストで鎌倉が舞台ならハズレることは無いので雨の中を日比谷へ。
夏帆ってケータイ刑事のイメージしかなかったけど大人になったなーとか、やっぱり東宝シンデレラはいいなーとか、綾瀬はるかと広瀬すずはしっかり似ててうまいキャスティングだなとか、ぼんやり眺めているだけで楽しめる。今回の樹木希林は浦辺粂子にしか見えない(似てないけど人物の存在感と作中の在り方が)。

食事シーンがこれまでの是枝監督の映画と比べても多い。高峰秀子さんと同じく、人がものを食べているところは醜いと思うほうだけど、この映画では不快感はない。美味しそうだなと素直に思える。食べ方が汚いタレントとは違うし音響もきちんと設計されてるからだろう。

正直言って『歩いても歩いても』や『幻の光』を観たときのような新鮮な感動はない。でも初めて観る映画なのに何度も観ているような安心感がある。
鎌倉の海と家からどうしても『麥秋』を思い出してしまうが、そういう表層的な部分だけじゃなくて、〈いのちの移ろい〉が通奏低音として奏でられていることが大きいんだと思う。
端的に言えば老人達の子供へのまなざしの温かさ。本作に限らずに『幻の光』から一貫してるけど、そういう場面を観るたびに、『麥秋』で宮口精二が笠智衆と碁をしている場面を思い出す。

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ジャズタモリ特集はグラビア以外たいして面白くなかったけどこれは大丈夫そう。

是枝裕和「幻の光」@TKPシアター柏

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是枝裕和監督の処女作をTKPシアター柏で。
たぶん4回ぐらい観てるが、いまだに新鮮。初めて観た是枝監督の映画がこれと「歩いても歩いても」の二本立てで、そのときの衝撃は凄かった。衝撃という言葉は似合わないけど、静かにじんわりとくるショックを受けた。

人物の表情がわかるようなカットは少なくて、ロングで捉えたショットやシルエットしか分からないショットが多い、と公開当時佐々木昭一郎氏が評していた(「テレビマンユニオンニュース」)。今回はその辺も意識して観ていたのだが、とにかく映像が心地良くて途中からどうでもよくなってしまった。
映像のリズムと同じぐらい、音響が繊細で気持ち良い。木の廊下の足音、アパートの安っぽいドア、いろいろな表情の風や波。すべてが音楽だと思わせてくれる。映画館を出た後に耳に入ってくる雑踏の音が少しいつもと違って聞こえる、そんな映画である。

原作のある映画だが、本作は是枝裕和なりの「四季・ユートピアノ」の変奏だと思えて仕方ない。音叉は鈴に姿を変えて。