木下惠介「お嬢さん乾杯!」@神保町シアター

木下惠介の『お嬢さん乾杯!』。
これは前から観たかった一本。没後の初鑑賞になってしまったのが悲しい。

kanpai
〈原節子=別世界の美人〉という方程式を観客全員が飲み込むことを前提として成り立ってる映画。そう考えるとなかなか凄いけど、彼女は本当に別世界の美人なので仕方ない。舞い上がる佐野周二の気持ちも痛いほど解るし、応援したくなる。

実際のところ、コメディだがギャグらしいギャグは例によってつまらない。劇場チラシの煽り文句ほど、原節子のコメディエンヌとしての魅力も開花していない(まだ五分咲きぐらい?)
だから正直いって途中までは「期待しすぎたかな…」と思ってたが、なんだか得体の知れない幸福感がジワジワと沁みてくる。

そしてラストであの台詞。やられた。
女優原節子の全盛期突入宣言だ、あれは。

これも落ちぶれた華族の話で、設定はちょっと久我美子さんを連想させる。
結構身近な話題だったのかもねん。

jimbochotheatre0827
惚れております。

木下惠介「野菊の如き君なりき」@神保町シアター

はじめて神保町シアターに来たのは08年の木下惠介特集。神保町シアターはそれ以来追っかけてるものの、木下恵介はそれほどでもない。

nogiku

この映画もズバリ苦手なタイプの日本映画だった。
杉村先生や浦辺粂子が脇を固めたところで主演二人の芝居は上手くないし、脚本もイマイチ。
全編のほとんどが回想シーンだからって、あの画面処理はないよなと思う。木下惠介の尖り方は当たり外れが激しい。『笛吹川』や『楢山節考』は大好きだがこの映画は完璧にハズレ。

冒頭の船に乗る笠さんのシーンだけなら良い映画だったのに。
ムラ社会の陰湿さを延々と見せつけられるのはツライ。

追悼・原節子

神保町シアターから帰ってきたら、原節子さんの訃報。
邦画黄金期の女優さん達については、覚悟は出来ているつもりなのだが、やっぱりショックは大きい。
原節子さんは、今もどこかで生きてると思うと少し安心できたり嬉しくなったりする女優さんだった。

bakushu

紀子三部作はもちろんすべて好きだが、『麥秋』はすべての映画の中でベストワンだ。奇蹟のような映画だと思う。

shuuu

小津以外の作品だと、成瀬の『驟雨』が演出も演者も脂が乗ってて好き。あとは『娘・妻・母』。どうということもない作品だけど、デコちゃんとの久しぶりの共演が嬉しい。

名女優は去り際まで完璧だった。ご冥福をお祈り致します。