本多猪四郎「大怪獣バラン」

『バラン』はもちろん大好きなんだけど、なぜか映画館で観る機会が無い。残念。
久しぶりに観たくなったのと、レンタル版にも特典やオーディオコメンタリーが収録されてるのを最近知ったのでDVDを借りた。

バランのシルエットと動きは一種官能的だ。
いくら中島春雄といえどもゴジラやラドンは着ぐるみを動かすのに精一杯だった感もあるし、逆にモゲラは無機的に歩いているだけだったので、バランが完成された初めての怪獣演技じゃないかと思う。
(あ、逆襲ゴジラがいたか…)
その場で回転したり首をぐるっと回したり、ものすごく生物的な動きだ。

小ぢんまりとした映画だが、そこがまたいい。
ライブフィルムの大量使用のせいで、海外のB級SFみたいな趣もある。
音楽はもちろん素晴らしいし、小粒できちんと美味しい作品だ。

本多猪四郎「メカゴジラの逆襲」

前作と同等かそれ以上にスケールが小さい。
それでも重厚な印象だから本多監督と伊福部先生の力は偉大だ。

ストーリーもシンプルなぶん、ツッコミどころも少ない。全編を覆う暗いムードがいい。
社会に居場所の無い科学者の苦悩は、第一作に通じるモチーフだ。

本多監督最後の映画である。
本多猪四郎ほどの映画監督が、晩年は黒澤さんの補佐に就くだけで自分の作品を撮らなかったのは、ご本人は満足してたのかもしれないけど、ファンとしては残念だ。

本多猪四郎「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」

「モヤさま」と「ドラバラ」が観たくて、癪だけどAmazonプライムに加入してしまった。
映画のラインナップはどうしようもないが、ゴジラシリーズが無料なのでたまに観たりしている。

『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』は子供の頃レンタルビデオで観て以来だから、二十何年ぶりの鑑賞。
全然印象に残ってないということはつまらなかったんだろう。二十何年間ずっと再見しようと思わなかったわけだし。

まあ、今観たってそんなに面白い映画じゃないけど、駄作と切り捨てることが出来ないのは、本多監督の子供への暖かい視線が本物だからか。
天本英世さんの優しい眼差しは、そのまま本多監督のそれである。

いじめられっ子、鍵っ子とはいっても、主人公はご近所さん達ともちゃんと交流があるし、まだまだ社会が正常に機能していた頃の光景が微笑ましい。
(もちろん、昔は深刻ないじめや児童虐待が無かったなんて言うつもりは無い。可視化されていなかっただけだ)

最近だと児童映画として観れば良く出来てるって再評価も多いし、その通りだと思う。
ただ、たぶん本作を楽しめるのは大人のほうで、肝心の子供達にとっては退屈だったろうとしか思えないのが、少し寂しい。

本多猪四郎「キングコング対ゴジラ(4Kデジタルリマスター)」@TOHOシネマズ日劇

さよなら日劇ラストショウ。
遂に観ることが出来た4Kリマスター版『キンゴジ』。

しかしこのポスターはどうなんだろう。コングが完全に添え物だ。

タイトルロゴからあまりの鮮明さに声が出そうになった。
人物の肌の色もすごく自然だが、もう少しイーストマンカラーっぽさが欲しかった気がしないでもない。
単に彩度だけを比べるなら以前観たチャンピオンまつり版のプリントのほうが発色が良い。ただ画面の情報量の前ではそんな不満も霞む。

『キンゴジ』は特撮シーンが同時期の作品に比べて弱いイメージがあったので、4K化で粗が目立たないか心配だった。
しかし目立ったのは特撮の出来の良さ(特にマット合成の精密さ)で、これまで自分が持っていたイメージは、主に画質の悪さに因るものだった。

逆にファロ島の本編シーンは、セット然としたセットや、赤道付近の設定にしては光量不足なライティングが目立つようになってしまったと思う。

それにしても、とにかく音響が素晴らしい。
91年版LDの音が原体験になってしまっている身としては、別の映画を観てるような気分だった。画面全体から漂ってくる祝祭感が凄い。

後ろの席に子供連れのお父さんがいた。
お父さんは「10代なんて君だけだよ」と男の子に言っていて、父にキネカ大森へ『プルガサリ』を観に連れていってもらったときのことを思い出した。
「子供なんか一人もいねえじゃんよ」と、12歳の自分を連れた父はすごく恥ずかしそうだった。そりゃそうだよな。

本多監督のお誕生日

ゴールデンウィークなのに一本も映画を観てない。
観たいものが無いわけじゃなくてたくさんあるのに。

まして今日は、本多猪四郎監督のお誕生日。おめでとうございます。


(↑3年かかってもまだ完成しないフルスクラッチの初代ゴジラ雛型)

それにしても、本多監督の特集上映が組まれたことってどれくらいあるんだろうか。
近年になって小林淳さんや切通理作さんの監督論が出版されたり、けっこう機会はあったのに。
3年ぐらい前のラピュタのモーニングショーは行けなかったのが残念。

映画の黄金週間に生まれた映画監督なんだから、来年はゴールデンウィークにどこかで『青い真珠』や『上役・下役・ご同役』が観られたらいいな。

「DVD ミラーマン Vol.1」

『ミラーマン』と『シルバー仮面』を並行して観てみようと思った。

『シルバー仮面』が突出してるから目立たないけども、『ミラーマン』だってウルトラシリーズに比べれば高めの年齢層を念頭に置いてたことを忘れちゃいけない。

1、2話は『帰ってきたウルトラマン』に続いて本多猪四郎監督。丁寧な脚本、演出で文句なし。
『シルバー仮面』が画面から常に不協和音を立てているのに対して、安心感をもって観られる。これはベテラン俳優の存在感も大きい。

必ずサングラスをかけるインベーダーはいま見ると笑えるが、暗めの画面にマッチしていて悪くはない。

そしてなによりも、1~5話の怪獣の魅力。
ここまで傑出したデザインが連続したのはそれこそ第一期ウルトラ以外だと本作ぐらいじゃないか。

第二次怪獣(変身)ブームでもったいなかったと思うのは、第一次ブームの際に円谷英二が心配していながら辛うじて逃れていた粗製濫造に陥ってしまった点。
『ミラーマン』も『シルバー仮面』も『宇宙猿人ゴリ』も、いやそもそも『帰ってきたウルトラマン』でさえ〈脱ウルトラ〉を標榜していたのに、せいぜい2クールぐらいで、おなじみのフォーマットで過剰に装飾された怪獣が暴れる番組に路線変更されてしまう。

どの番組も開始当初の路線を全うできていたら、それこそ本物の百花繚乱だったのに。
惜しい。

本多猪四郎「モスラ対ゴジラ」@神保町シアター

初めて観たゴジラは『モスゴジ』。『VSモスラ』公開前にWOWOWで無料放送されたとき。
当然ビデオに録って何回も観たし、後々LDも買った。
なのに印象が薄い。スクリーンで観るのは初めて。

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あらためて観ると、細かいところまで本当に良く出来た映画だった。
昔は映画が進むに従ってこぢんまりしていくような印象があったけどそんなこともない。

それでも『キンゴジ』よりスケールダウンした感は否めない。ただ本多監督は前作のコメディタッチが不本意だったらしく、その反省が全編に緊張感をもたらしている。
〈人と人との相互信頼〉がテーマだから、人間の汚ない部分はあくまでも汚なく描く。演じるのは佐原健二と田島義文だし、大映みたいにドス黒くはならないけど、それでも本多演出には珍しく流血を伴う直接的な暴力描写もある。

この映画で唯一残念だと思うのは、セット丸出しのインファント島の岩場。かつて原水爆の実験場にされた悲惨さがイマイチ伝わってこない。
見渡す限り草一本無い荒れ地を、人や動物の白骨が埋め尽くしているようなショットが一つでも欲しかった。それでこそ島民の人間不信や聖なる泉の重さが説得力を持つ。
たとえ予算が無くてもこの場面は粘るべきだったように思う。

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(今日のゴジラはディスクユニオン帰り!)

特撮は凄い。冒頭の排水ポンプやモスラの卵に向かって進む漁船は、『海底軍艦』で海中に飛び込むタクシーに続いて、“特撮だと思わせない特撮”の到達点だと勝手に思う。

ゴジラ出現シーン、オプチカルプリンターを駆使した四日市〜名古屋蹂躙シーン、特車隊の攻撃シーンも、セットから編集まですべて完璧。
成虫モスラとの対決シーンは、操演の凄さはもちろん、円谷英二の編集技術の集大成だ。
カメラスピードを変えたカットを組み合わせるのは当たり前で、短いショットをループ状に(?)再生と逆再生を繰り返して使うことまでしている。放射能を頭部に受けたモスラの動きは昆虫そのものだ。
本来なら戦いようがない二体の見事な戦いぶり。

たぶんこの作品あたりで、円谷さん(本多さんも)としてはゴジラで出来ることはやり尽くした感があったはず。次作で複数の怪獣が絡むのを最後に、ゴジラ映画から新基軸は無くなる。だからこそ円谷さんは前年にはもう円谷プロを作っているし、本多監督の本領もゴジラ以外の作品で発揮されるようになっていく。

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本多・円谷コンビのいくつかの到達点のひとつとして挙げられるのは、『キンゴジ』ではなくて意外とこっちかもしれないと思った。ある意味では最後のゴジラかもしれない。