上原正三さんの訃報

上原正三さんが亡くなられたそうだ。

作家としての上原さんのキャリアをみれば、東映作品を手掛けていた時代のほうが円谷プロ時代より長く、作品数も圧倒的に多い。
それでも自分にとって上原さんは円谷プロの作家だし、代表作も『帰ってきたウルトラマン』までに集中しているように思う。

傑作は数多ある。でも結局、自分にとっての上原作品といえば、『怪奇大作戦』の「かまいたち」だ。
極端な話、もし他の25本がすべて駄作だったとしても、この一本があるだけで、『怪奇大作戦』は古典になり得た。

自分は「かまいたち」の犯人・小野松夫を見て救われた。
真面目で、大人しくて、いたちのようなおどおどした目をした男。
社会に馴染めず、どこか鬱屈したものを抱えている青年。
その後、小説や映画に接していくなかで、カミュの『異邦人』はもちろん、自分を代弁してくれる作品に出会うことも増えたが、「かまいたち」はそういった類の初めての体験で、中学生の自分には衝撃だった。

小野松夫という人間を描いてくれたことに心から感謝しつつ、今日も仕事に向かう憂鬱な電車のなかから、ご冥福をお祈り致します。
本当にありがとうございました。

シン・ウルトラマン雑感

『シン・ウルトラマン』なんて作る意味があるのかと思っていた。
『シン・ゴジラ』は作る意味があった。というより、フクシマを経験した以上、〈作らなければいけない〉映画だったし、どうでもいいことを言えば、ゴジラファンですらゴジラを口に出すことが無くなっていた冬の時代を終わらせる副次的な効果もあった。

でもウルトラマンは。どこまで堕落しようとも一応は認知され、良し悪しは別としてシリーズも続いているし。
『シン・ゴジラ』の便乗企画程度にしか捉えていなかった。

で、雛型を見て、ほんのちょっとだが納得できた。
これは円谷プロから成田亨先生への贖罪なのかもしれない、と。

成田先生が円谷プロへの複雑な思いを抱いたまま鬼籍に入られたことは、とても残念なことだと思う。
しかも円谷プロはいまでも、成田先生や金城さんの遺産で糊口を凌いでいる。

それでも、今の円谷プロにも良心の呵責が無いでもないことは、ウルトラセブンねぶたのときに窺えた。
(それだってわからない。結局は自社キャラクターのPRのためだと言われればそれまでだ)


(↑『成田亨作品集』より)

まあ、そういう泥臭い話は抜きにしても、ファン以外の一般層が成田先生を認知するきっかけになればいいなと思う。

〈第一次ウルトラ〉以外認めないとは言わないまでも、自分もやっぱりエースぐらいまでしか許せない人間なので、余計にそう思う。

来年は円谷英二監督没後50年だ。

「別冊映画秘宝 平成大特撮 1989-2019」

楽しみにしてた『平成大特撮 1989-2019』。

情報量が凄い。写真は少なめなので、小さめの活字でひたすらページが埋まっている。
必ずしも〈情報量=データの量〉ではなくて、作品のレビューは評者の思い出語りだったりする。
それが不満かといえば微妙なところで、多少のノスタルジーを含んだ語り口のおかげで、観たことのない作品でも面白く読めるページもある。

ベクトルは違うが、作品との距離の取り方が微妙なのは、元祖『大特撮』も同じ。
かたや行き過ぎた酷評、かたや思い入れ過多の礼賛。どっちも愛情ゆえだとは思うけど。
良くも悪くも、当時と現在の批評家によらない批評のあり方やそれを取り巻く環境の違いがよく解る。

まあ値段も安いし、少しずつ読めば、今年いっぱい愉しめるかも。

「エンターテインメントアーカイブ 怪奇大作戦」

エンターテインメントアーカイブシリーズを買うのは初めて。
値段に少し躊躇したが、『怪奇』のムックなんてそうそう出るもんでもないので購入。
紙質も印刷もいいし、数十年前のファンコレと価格を比較しても仕方ない。

エピソードによって写真点数にバラツキがあるし、1枚も載ってないエピソードすらある(京都篇も)が、それは作品の性質(内容、時期)を考えると仕方ないと思う。
むしろこれだけのスチールが50年も残っていたことに驚くべきなのかも。

ただ、「狂鬼人間」のスチールは、少なくとも日本刀を構えた大村千吉のシーンだけでも何枚か残ってるはずだし、「ゆきおんな」もゆきおんな役の女優さんのアップを撮影してるスナップを見たことがあるので、探せばまだあるんじゃないかと思わなくもない。

併録の『戦え!マイティジャック』はページ数合わせだろうが、作品自体に思い入れがないので特に不満もない。
ただ個人的には、『恐怖劇場アンバランス』のほうが、内容的にも話数的にもちょうど良かったんじゃないかと思う。『アンバランス』だと出演者が豪華すぎて余計値段が上がってしまうか。

そんな感じで、本の内容にはそれほど不満もないが、誤植の多さだけはどうにかしてほしかった。
明らかに校正ミスな箇所が気になる。そこだけが残念。

「怪奇大作戦 / セカンドファイル / ミステリー・ファイル オリジナル・サウンドトラック」

正直に言ってしまえば、リメイク版2作品には興味が無いので、オリジナルだけの2枚組ならお値段ももっと手頃だったろうに、とは思う。
とはいえ、CINEMA-KANなので内容に間違いはない。

ライナーノーツ含めて、所有欲を満たしてくれる丁寧な仕事だ。
音質も、ミュージックファイルより音圧が上がった上に解像度が上がったような印象。
1トラックに複数の楽曲が収録されてるのはミュージックファイルと同じでちょっと残念だが、短いブリッジ曲が多いから仕方ないのかもしれない。
「吸血地獄」からのME抜粋1曲目に収録されてる曲(極端に高音域に楽器が固まった曲)はマスターテープが発見されることを期待してたのだが、やっぱり無理だったようだ。どこかに眠っていてくれないかな。

地味に嬉しいのが、ディスク2最後に収録された「モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲」。
『怪奇大作戦』後半は、追加レコーディングされた音楽の6ミリテープも紛失しているし、スチールもほとんど現存していない。
(おそらくもうスチールマンが現場に来ることも少なかったんだろう)
「『怪奇大作戦』の挑戦」によれば、円谷英二は番組途中から試写の感想を日記に記さなくなる。
2クールで終了が決定している番組など、監修者として一応チェックはするものの、もはや関心が持てなかったのだろう。
成田亨や金城哲夫が次々と退社し、テレビ局からの発注も途絶えた円谷プロには冬の時代が到来する。

「魔笛の主題による変奏曲」は、そんな円谷プロへのレクイエムのように響いてくる。
実相寺監督が当時のプロに集まった人達を懐かしんでいるような、そんな錯覚にまで襲われる。

白石雅彦「『怪奇大作戦』の挑戦」

『怪奇大作戦』肝心のBlu-rayは金欠でまだ買っていない。
続いてこれからムック本、サントラと出るようなので嬉しい悲鳴。

そんな中、先鞭を切ったこの本だけはとりあえず買った。
8時間弱で読み終えた。

どこを読んでも面白いが、特に序盤、『マイティジャック』の失敗から『怪奇大作戦』放送に到るまでの紆余曲折は面白い。
円谷英二の日記(これも出版してほしいと個人的には思う)からは、社長としてプロ内部を憂慮する気持ちが痛いほど伝わってきて辛くなる。

図版がないのは淋しいし、すでに亡くなられたスタッフの証言は過去のものに依らざるを得ないから新味がない、という恨みもあるにはある。でもそれは大した問題じゃない。主眼はその先の考察なのだから。
そういう意味で、24話に一切触れてないのはどうかと思う。
せめて満田、山浦両氏が番組に参加することになった経緯ぐらいは書いてもいいはずだ。

とはいえ良書には間違いない。

怪奇大作戦 Blu-ray化

遂に、やっと、『怪奇大作戦』がBlu-ray化される。


嬉しいことは嬉しいのだが、東映からのリリースというのが少し不安…。
ちゃんと丁寧にレストアしてほしい。

Amazonの商品詳細を見るかぎり、予告編が「青い血の女」だけなのも不満。
「狂鬼人間」は無理だとしても、「人喰い蛾」「壁抜け男」も残っているはずだし。
欲を言えば、『円谷プロ怪奇ドラマ大作戦』に再録されているのだから、どれだけ劣悪な状態でも予告編の音声は現存するはず。これもすべて収録するぐらいのことはしてほしい。

作品が作品だけに欲が出てしまう。
結局DUP版が決定版だった、なんてことにならないように祈ります。