円谷一編著「円谷英二 日本映画界に残した遺産」

1月25日は円谷英二監督のご命日である。
今年で没後50年。

円谷さん関連の本のなかでは基本中の基本となる一冊。
これは01年の復刻版。

特撮関係のスチールに珍しいものは少ないし、事実関係の誤りも多い。(ちゃんと正誤表が付いている)
反対に、幼年時代~戦前の写真は今でも(今だからこそ)貴重だろう。
なにより、円谷さんの没後数年のうちに、一さんが編纂して出版したという歴史的な価値はますます大きくなるばかり。
(73年のジミヘンの映画みたいなもの)

回顧上映が組まれることを期待しつつ、あらためて円谷さんに感謝。

上原正三さんの訃報

上原正三さんが亡くなられたそうだ。

作家としての上原さんのキャリアをみれば、東映作品を手掛けていた時代のほうが円谷プロ時代より長く、作品数も圧倒的に多い。
それでも自分にとって上原さんは円谷プロの作家だし、代表作も『帰ってきたウルトラマン』までに集中しているように思う。

傑作は数多ある。でも結局、自分にとっての上原作品といえば、『怪奇大作戦』の「かまいたち」だ。
極端な話、もし他の25本がすべて駄作だったとしても、この一本があるだけで、『怪奇大作戦』は古典になり得た。
自分は「かまいたち」の犯人・小野松夫を見て救われた。

小野松夫という人間を描いてくれたことに心から感謝しつつ、今日も仕事に向かう憂鬱な電車のなかから、ご冥福をお祈り致します。

「エンターテインメントアーカイブ 怪奇大作戦」

値段に少し躊躇したが、『怪奇』のムックなんてそうそう出るもんでもないので購入。
紙質も印刷もいいし、数十年前のファンコレと価格を比較しても仕方ない。

エピソードによって写真点数にバラツキがあるし、1枚も載ってないエピソードすらある(京都篇も)が、それは作品の性質(内容、時期)を考えると仕方ないと思う。
むしろこれだけのスチールが50年も残っていたことに驚くべきなのかも。

ただ、「狂鬼人間」のスチールは、少なくとも日本刀を構えた大村千吉のシーンだけでも何枚か残ってるはずだし、「ゆきおんな」もゆきおんな役の女優さんのアップを撮影してるスナップを見たことがあるので、探せばまだあるんじゃないかと思わなくもない。

併録の『戦え!マイティジャック』はページ数合わせだろうが、作品自体に思い入れがないので特に不満もない。
ただ個人的には、『恐怖劇場アンバランス』のほうが、内容的にも話数的にもちょうど良かったんじゃないかと思う。『アンバランス』だと出演者が豪華すぎて余計値段が上がってしまうか。

そんな感じで、本の内容にはそれほど不満もないが、誤植の多さだけはどうにかしてほしかった。
明らかに校正ミスな箇所が気になる。そこだけが残念。

「怪奇大作戦 / セカンドファイル / ミステリー・ファイル オリジナル・サウンドトラック」

正直に言ってしまえば、リメイク版2作品には興味が無いので、オリジナルだけの2枚組ならお値段ももっと手頃だったろうに、とは思う。
とはいえ、CINEMA-KANなので内容に間違いはない。

ライナーノーツ含めて、所有欲を満たしてくれる丁寧な仕事だ。
音質も、ミュージックファイルより音圧が上がった上に解像度が上がったような印象。
1トラックに複数の楽曲が収録されてるのはミュージックファイルと同じでちょっと残念だが、短いブリッジ曲が多いから仕方ないのかもしれない。
「吸血地獄」からのME抜粋1曲目に収録されてる曲(極端に高音域に楽器が固まった曲)はマスターテープが発見されることを期待してたのだが、やっぱり無理だったようだ。どこかに眠っていてくれないかな。

地味に嬉しいのが、ディスク2最後に収録された「モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲」。
『怪奇大作戦』後半は、追加レコーディングされた音楽の6ミリテープも紛失してるそうだし、スチールもほとんど現存していない。
(おそらくもうスチールマンが現場に来ることも少なかったんだろう)
「『怪奇大作戦』の挑戦」によれば、円谷英二は番組途中から試写の感想を日記に記さなくなる。
2クールで終了が決定している番組など、監修者として一応チェックはするものの、もはや関心が持てなかったのだろう。
成田亨や金城哲夫が次々と退社し、テレビ局からの発注も途絶えた円谷プロには冬の時代が到来する。

「魔笛の主題による変奏曲」は、そんな円谷プロへのレクイエムのように響いてくる。
実相寺監督が当時のプロに集まった人達を懐かしんでいるような、そんな錯覚にまで襲われる。

白石雅彦「『怪奇大作戦』の挑戦」

『怪奇大作戦』肝心のBlu-rayは金欠でまだ買っていない。
続いてこれからムック本、サントラと出るようなので嬉しい悲鳴。

そんな中、先鞭を切ったこの本だけはとりあえず買った。
8時間弱で読み終えた。

どこを読んでも面白いが、特に序盤、『マイティジャック』の失敗から『怪奇大作戦』放送に到るまでの紆余曲折は面白い。
円谷英二の日記(これも出版してほしいと個人的には思う)からは、社長としてプロ内部を憂慮する気持ちが痛いほど伝わってきて辛くなる。

図版がないのは淋しいし、すでに亡くなられたスタッフの証言は過去のものに依らざるを得ないから新味がない、という恨みもあるにはある。でもそれは大した問題じゃない。主眼はその先の考察なのだから。
そういう意味で、24話に一切触れてないのはどうかと思う。
せめて満田、山浦両氏が番組に参加することになった経緯ぐらいは書いてもいいはずだ。

とはいえ良書には間違いない。

「別冊映画秘宝 特撮秘宝 Vol.7」

狂った雑誌第7号。

中島春雄さん追悼特集は読んでくれと言うしかない。こんなに愛のこもった特集、他誌じゃ無理だろう。
関係者の言葉はどれも素敵だ。長女の園恵さんが語る父としての中島さんの姿はグッとくる。

土屋嘉男さん、橋本力さん、永田秀雄さん。
追悼ばかりなのは悲しいが、映像は永遠に遺るから寂しくなる必要はない。

通常記事ですごいのはアゴンのカラー写真。
カラーで見たって茶色一色の怪獣だが、そんな野暮なこと言っちゃいけない。

「別冊映画秘宝 特撮秘宝 Vol.6」

狂った雑誌第6号。
よくまあこんだけ濃いネタを途切れずに掘り出してくるもんだ。凄い。


今号はまるまる平成ゴジラに割いてるような印象。
当時のスタッフの座談会はもちろん、ムック編集者座談会まであって、嬉しいし懐かしい。欲を言えば「ホビージャパンEX」の編集者にも参加して欲しかった。

しかし人気怪獣ランキングを見ると、自分にとって魅力的だと思える平成怪獣って『ビオランテ』と『キングギドラ』の怪獣だけなのに気づかされる。
『スペースゴジラ』以外のVSシリーズは素直に好きだと言えるようになったのに、怪獣単体で見るとどれもこれも格好悪い。目を吊り上げて牙生やせばいいってもんじゃないだろうとは当時から思ってた。

デスギドラやグランドギドラもデザインは悪くないし音楽もいいから、そこだけ切り取れば今観ても悪くないかもしれない。ただそれはやっぱりキャラクターとしても作品としても失敗ってことだろう。

例外的に好きなのはガルガル。あれは平成モスラにはもったいないぐらい良いキャラクターだと思う。猫っぽいドラゴンって感じで可愛い。スタチュー欲しい。


座談会で西川伸司と白石雅彦が「『シン・ゴジラ』の成功は怪獣映画の復権ではない」と言い切っているのが重い。
確かに去年はシン・ゴジラブームではあってもゴジラ・ブームでは決して無かった。
グッズ展開なんかを見ても、歴代ゴジラがラインナップされることは殆ど無かったし。

特撮ファン以外で、『シン・ゴジラ』を特撮だと思って観た人はいないように思う。エヴァの実写版とか、アニメのヴァリエーションみたいに捉えてるんじゃないだろうか。
だから前号のように、「この国の特撮はまだまだやれる」なんて全く思えないのが虚しいところではある。

実相寺昭雄特撮オールナイト第2夜@新文芸坐

実相寺昭雄特撮オールナイト、第2夜。

『怪奇大作戦』を映画館で観られるんだから、迷う理由もない。
しかも仕事終わりじゃないから寝る心配もない。

まずは樋口尚文とアンヌ、三輪ひとみさんでトークショー。
トークの内容は置いといて、三輪さんとアンヌの綺麗なこと(アンヌは古稀らしい。嘘だろう〉。
三輪さんは表現も話し方も笑い方も素敵な人だった。でも出演作はひょっとしたら一本も観てないかもしれない。(子供の頃から『宇宙船』なんかで見ては綺麗な人だなぁと思ってたのに、出てるのがホラーばかりで怖くて観られなかったんです。ごめんなさい)

途中から中堀正夫さんも加わって、カメラマンから見た実相寺監督が語られる。でも技術的な話は少なくて、監督の人柄を偲ばせる楽しい話ばかり。
(フィルモグラフィによれば『幻の光』も中堀さんの撮影…個人的な悦び!)

他にも、円谷プロと成田亨先生の確執に関するいい話とか、『セブン』12話を解禁するなら今年しかないだろうって話とか。アンヌが語るのは予想外の話ばかりで楽しい。

12話は、問題は解決しているし出そうと思えば出せる、けど各所が遠慮しあってる(樋口さんの言葉を借りれば「非常に日本的な状況」)だけらしい。
あとはファンの後押しだけだよ、ということで盛り上げてくれるアンヌ隊員。
そう言われるともうすぐなんだろうな、って気持ちにこちらもなってくる。

中堀さんによれば、レストア済みの12話は全エピソード中でいちばん綺麗だそうだ。フィルムの劣化が少ないからだろう。嬉しいけどちょっと複雑だ。

で、『怪奇大作戦』。
4作とも何十回と観てるが、スクリーンで観るとやっぱり印象が違う。まったく粗の見えない作り込みの細かさは完全に35mmの映画並み。

実相寺演出ならではの細かい仕草によるボケもよく判る。
京都篇はアフレコじゃなくて同録だから、映画館のほうがセリフも聞き取りやすいし、なによりスクリーンが似合う。

ただ、今回の上映素材は(たぶん)DVDと同じ疑似ステレオだったようで、そこだけは不満。京都篇は特にリミックス作業で付け加えられたアンビエントノイズと、オリジナル音声との剥離が目立つ。

音響設計にも徹底的にこだわる実相寺昭雄の特集なんだから、第3夜ではぜひオリジナル音声で再上映してほしい。

次は『シルバー仮面』から5本。
CSで何本か観たことがある程度だったから新鮮。兄弟の絆を軸にした暑苦しい設定は苦手だが、シリアスなのに笑いが漏れるのは映画館ならでは。
実相寺演出は1本だけで、あとは大木淳や佐藤静夫が演出したエピソード。当時の日本現代企画周辺の尖りっぷりがビンビンに伝わってくる。

ただ、元を辿ればその尖った感性のスタッフ達も円谷プロにいたわけで、次の『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』なんかも併せて観ると、逆説的に金城哲夫という人の凄さが感じられる。


(第3次怪獣ブームの熱は感じられる。でもそれだけ。新撮カットや再録主題歌のショボさが悲しい)

大島組にいた左翼系の人達から、TBSの飯島監督や実相寺監督みたいな個性の強いディレクター陣、東宝から来た活動屋まで、職人気質だろうが作家性が強かろうが、とにかく好き勝手にやらせて、なおかつ壊れない世界観を作ってしまった。

巨大ヒーローもののフォーマットを『ウルトラマン』一本で確立してしまったのと同時に、すでにその中でアンチテーゼもパロディも批判も行ってしまった。
後になって大江健三郎がする批判や、お笑いでネタにされるようなお約束の揶揄なんか、全部自分達でやっちゃってたのだ。
これはとんでもないことだと改めて思う。

そしてやっぱり、金城哲夫は宮沢賢治だ、との思いを強くする。
唐突だが、理想を追い求める強さと繊細さ、場を作る能力や、独特の宇宙観・生命観に、似通ったものを感じてしまうのだ。

実相寺昭雄オールナイトだったのに、早朝の池袋をブラブラしながら考えたのはそんなことだったりする。

「戦え!マイティジャック 来訪者を守りぬけ」

〈なんでもぞくぞくシリーズ〉と銘打っただけあって、ヤケクソというかどう楽しんでいいのか解らない話が続く『戦え!マイティジャック』第2クール。
そんな中で光る、というか一際異色なのが第16話「来訪者を守りぬけ」。
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不時着した宇宙船を修理したいだけで侵略の意思はないモノロン星人と、それを匿う今井隊員。
しかしモノロン星人のペット、宇宙猿バッキーが地球環境の影響で巨大化してしまい、それを攻撃と受け止めたMJは攻撃を始める。火だるまになって息絶えるバッキーが哀れ。

MJは仲間を救助に来たモノロン星の円盤群まで問答無用で攻撃する始末。
まるで「ノンマルトの使者」だが、こちらはさらにへヴィ。

いきなり脈絡もなく軍隊然とした自衛隊(?)が現れて円盤を攻撃する。MJの隊員服姿の今井が、〈ごっこ遊び〉でもしてるように見える衝撃。

ラスト、モノロン星人が侵略者だという誤解は解けた…と思ったのも束の間、軍隊は一斉に発砲してモノロン星人から贈られた白い鳩を殺す。
「平和を返せ!」という今井隊員の絶叫をかき消して軍靴の音が去っていく。

あらためて『戦え』の放送リストを見ると、金城哲夫が手掛けた脚本は少なく、そのうちの1本が本作。
異人種間の相互理解なんて最初から諦めてしまっているような痛ましさが、最終回に希望を残した『ウルトラセブン』との決定的な違い。

いい作品だとは思うものの、金城さんが当時陥っていた精神的な苦境がモロに出てて辛い。作家性云々とは別の話。
『私が愛したウルトラセブン』で、金城さんがベトナム戦争のニュースを眺めるシーンや、船のデッキでひとり酒をあおるシーンが浮かんでくる。

「恐怖劇場アンバランス 仮面の墓場」「殺しのゲーム」

『DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2』。
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第3話「殺しのゲーム」。
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理性的で誠実な岡田英次と、正気と狂気の間にいるような田中春男の対比はいい。
田中春男は好きな俳優さんだが、溝口や成瀬の映画で見られる軽妙な関西人風情とは打って変わって重い雰囲気。いっぽうで岡田英次は極端に言えば『また逢う日まで』からたいして変わっていない。

ただストーリーと演出は平凡。長谷部安春とは相性が悪いのかもしれない。お行儀がよくてあまり印象に残らない一本だった。

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対照的に、作り手の尖りっぷりが半端じゃない第4話「仮面の墓場」。
市川森一のやりたい放題な脚本を、最高な状況にいる唐十郎を使って山際永三が好き放題に撮る。つまらないはずがない。

火葬場・焼身恐怖症なので、ボイラーのシーンが嫌でずっと避けてきたが、無理してでも観るべきだった。めちゃくちゃ怖いが本当に面白い。
緑魔子とか濃いメンツが出てるものの、ほとんど唐十郎の一人舞台。ラストの一人芝居はもちろん凄い。そしてそこに到るまでゆっくりと狂っていく芝居も真に迫っていて怖いったらない。何人焼けば気が済むんだ貴方は。
とにかくオーラが凄いし、目が怖い。

『アンバランス』がお蔵入りになっていちばん割りを食ったのは本作や「木乃伊の恋」あたりじゃないだろうか。
69年のゴールデンタイムと73年の深夜枠じゃ、受け手の唐十郎に対する認識がかなり違っていたはず。
もしも予定通りに放送されていたら…。