佐渡岳利「NO SMOKING」@シネスイッチ銀座

『細野観光』には結局行けなかった。
都合が付かなかったのもあるけど、ヒルズのあの空間が嫌いということもあったり。
なのでそのぶん、今日は細野さんのドキュメンタリー『NO SMOKING』を。

よくできた映画だ(細野さんを題材にして駄作になるはずがない)が、初めに言ってしまえば、短すぎる。
細野さんの人生を2時間足らずでフォローするなんて、土台無理な話だ。5時間ぐらい欲しい。
それでも、肝心なところは勿論きちんと押さえてある。

個人的には、もっと個々のアルバムについて突っ込んだ話が聞きたかった。
また、細野さんのインタビューがメインなので、周辺のミュージシャンへのインタビューはほぼ皆無。
そこも少し不満。
はっぴいえんど〜ティンパン〜YMO〜アンビエント〜ルーツ回帰、その他サントラや歌謡曲界隈までの人脈を網羅して細野さんについて語ってもらいたかった。
それはそれで膨大すぎるので、まあ夢みたいなものだけども。

それにしても。
細野さんと大滝さんの邂逅は何度聴いても楽しい。
お、Get Together!

大滝詠一「NIAGARA CONCERT ’83」

今年の3/21に出たのは『NIAGARA CONCERT ’83』。
『DEBUT AGAIN』の内容から次はライブ盤だろうと予想は出来たけど、本当に出るとやっぱり嬉しい。
しかもヘッドホンコンサートじゃなくて西武球場ライブだ。

録音も演奏もミックスもいい。
ブックレットも併せて読むとイベントの裏側が窺い知れて面白い。
ただ、何度も聴くかというと微妙なところで、自分にとってのナイアガラの魅力はスタジオワークの凄さとレーベルのカタログなんだと改めて思った。

それでも、「EACH Sings Oldies From NIAGARA CONCERT」と副題が付いたディスク2は結構聴いてる。
オールディーズだけをまとめた選曲のおかげで、歌手というより〈音楽少年〉のままの大滝さんが感じられるのがいい。
もちろん歌は滅茶苦茶巧いのだけど、「自分の歌を聴かせたい」ではなく、「観客と一緒に好きな歌を聴いて楽しみたい」、自分にはそんな風に聴こえる。

オールディーズにはまだまだ疎いので、こんな曲からあんな曲ができたのかもなーとか想像を巡らせても単純に楽しい。

で、ある意味いちばんの目玉はDVDだが、なんかもったいなくてまだ観てない。連休の最後に観ようかな。

大滝詠一「DEBUT AGAIN」(Limited Vinyl Edition)

大滝さんの『DEBUT AGAIN』は、繰り返し何度も聴く曲と、2〜3回聴けばいい曲との差が激しい。
正直言って第3期(?)ナイアガラにはあんまり興味がないし、さくらももこ嫌いだし。

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それでも帯と裏ジャケに負けて、入荷日にアナログ盤も買った。この帯は卑怯だと思う。

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そして裏ジャケ。

もっと嬉しかったのがインナースリーブ。『EACH TIME』のインナースリーブに人生を狂わされた身としては、これだけでも買って良かったと思ったりする。
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片面だけなのが寂しいけど(片面はレーベルロゴ)、これもまた聴く時間より眺める時間のほうが長くなりそう。

大滝詠一「DEBUT AGAIN」

今年の3月21日は何も出ないだろうと思っていたら、他人への提供曲集。
嬉しいことは嬉しいけど、ミュージシャンの死後に音源を蔵出ししてきて〈新譜〉と謳って売ることにはどうしても抵抗がある。
せめて〈デモ〉とか〈没テイク〉ときちんと表記するのが墓暴きの最低条件じゃないの。(本作はデモの類いではないけど)
もっとも大瀧さん自身、エルヴィスの墓暴きなんか大好きだったんだろうな。

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どうしても『風街で逢いませう』の続きとして聴いてしまうから、とにかく「Tシャツに口紅」が嬉しい。
「熱き心に」は「さらばシベリア鉄道」ほどじゃないけど、新旧世代の歌詞への意識の違いの好サンプル。アキラは言葉の意味、役割までは分解しないが、大滝さんは意味よりも母音と子音の響きに重きを置いてる。

ヘッドフォンコンサートの「風立ちぬ」も凄い。ただ、コンサート完全版の予告編的な小出し商法だったらイヤだな。
薬師丸ひろ子の2曲はミックスがちょっと不満。

風街レジェンド2015@東京国際フォーラム

21日の〈風街レジェンド2015〉に行った。

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公演発表の瞬間に、絶対に行くと決めた。
メンバーがすごいのはもちろん、やっぱり“はっぴいえんど”。
細野さんは何度か観たし、茂さんとの絡みもTINPANでこれからも観る機会はあるだろう。でも松本さんがドラムとなると…。
〈All Together Now〉が最後のチャンスだったんだろうと思いながらずっと生きてきた(その翌年生まれ)ので、今回はなにがなんでも行くしかない。
もちろん大瀧さんがいないのは寂しい。でも3人揃うことだけですでに奇蹟なのだ。

だから当日、『風街ろまん』のジャケットが映し出されたスクリーンが上がり、そこにあの3人が立っているのを目の当たりにした瞬間、本当に鳥肌が立った。(出来れば立ち上がりたかった)
一曲目は「夏なんです」。はっぴいえんどでいちばん好きな詩。写真で見る猫背とまったく同じ姿でドラムを叩く松本隆を生で観ている!!!!
途中少し不安定になったりするものの、逆に緊張感を感じさせていい。
次はかなりヘヴィになった「花いちもんめ」。オリジナルより良かったかもしれない。
そして「はいからはくち」のボーカルは大滝さんに代わって佐野元春。あらためて文字にすると豪華すぎて意味が分からない。
「ソロだ!」で松本さんのドラムソロ。凄い!

その後のセットリストはまさに生で観る『風街図鑑』。風街ばんども鉄壁。
まずは太田裕美「木綿のハンカチーフ」。裕美さんの曲は松本さんの歌謡曲仕事のなかでも、松田聖子と並んで特別な位置にあると思う。シングルだけじゃなくてアルバムも作り込まれてて名盤が多い。
それにしても、裕美さんって全然変わらない。なんであんなに可愛いんだろう。

原田真二「てぃーんずぶるーす」。てっきり作曲も茂さんだと思ってたけど編曲だけだった。ピアノを弾く姿はカッコイイが、「タイムトラベル」でサビを合唱するように会場をけしかけるのはちょっと。ああいうのは好きじゃない。ごめんね。

大橋純子、石川ひとみ、美勇士あたりはそれほど思い入れがないので平静を取り戻す時間。当たり前だけど歌が上手い人ってのはすごいなと。

「東京ららばい」を歌うのは中川翔子。しょこたんにも思い入れはない。でも結構アウェイな中で熱唱する姿は滅茶苦茶カッコイイと思った。好きなものを「好き」って言い続けてきたことの強さを見せつけてくれる。曲も好きなので文句なし。

再結成イモ欽トリオは再結成はっぴいえんどと同じくらいの奇蹟、かもしれない。ベタだけど笑わせてくれるし、これは聴くというより観る曲なんだなと思った。スターボーも再結成すれば良かったのに。

山下久美子「赤道小町ドキッ」、早見優「誘惑光線・クラッ!」。このへんはちょっと順番が曖昧。
シューベルト「冬の旅」の現代日本語訳を鈴木准テノール、河野紘子ピアノで。まったく毛色が違うとはいえ、あからさまに席を立つ人達にイラッ。

永井博さんのイラストを思い起こさせる情景がスクリーンに映し出されて、ここから予想外にして怒濤のナイアガラ・タイム!

ちゃんとチューニングのA音から始まる「君は天然色」。風街ばんどの音圧がまさにナイアガラ・サウンド。なんたってバンマスは井上鑑さんだ。
銀次さんと杉さんが並ぶと、銀次さんがギター低めのジョン・レノン立ち、杉さんがポール立ちに見えてきて無意味に嬉しくなる。

杉さんのMCにグッと来つつ、元春さんが再度登場して、トライアングルVol.1と2の「A面で恋をして」。
“シリアスな気持ち 横において”っていう歌詞が、大瀧さんを楽しく偲ぶ当日の雰囲気そのまま。

鈴木雅之は「Tシャツに口紅」と「冬のリヴィエラ」、渋い。
なによりも“ナイアガラの一員として”歌ってくれたことの喜び。

稲垣潤一が「バチェラー・ガール」と「恋するカレン」。
稲垣さんも声が変わらない。「カレン」の歌詞は正直言ってそんなに好きじゃないけど、歌の説得力に持っていかれた。

ナイアガラタイムが終わって、次は誰かと思ったら、摩天楼のヒロイン、南佳孝!
もちろん「スローなブギにしてくれ (I Want You)」。演奏も歌もコクがあって最高。これもスタジオ版より良かったかもしれない。
佳孝さんが茂さんを呼び込んで「ソバカスのある少女」。地味だけど嬉しい選曲。立夫さんのドラムも美味。ティンパンよりもキャラメルって呼びたい気分。

続いて茂さんのソロ「砂の女」。松原正樹、今剛と3人でギターバトル。凄かったよ。椅子揺らしすぎて隣の人は迷惑だったかもしれないけど、圧巻のグルーヴ。ホントにギター弾きたくなる演奏。

余韻に浸っていると、スクリーンには「しらけちまうぜ」の歌詞が! 客席で一番早く拍手した自信があります。
忠さんもカムバックしてからどんどん渋くてダンディになってる。滅茶苦茶カッコイイ。ここでも立夫さんのドラムが最高。
(スタジオ版のエンディングでシンバルを連打してピシッと止めるところも、曲の主人公が背中を向けた瞬間を表してるようで最高にカッコイイ)
忠さんは意外にも1曲だけ。もったいないよー。「流星都市」とか、どうせなら「暗い日曜日」でも演ってくれたら面白かったのに。

スクリーンにでっかく「矢野顕子」! 別格。ティンパンタイムだったのか。
アッコちゃんが歌うならはっぴいえんどか細野さん絡みの曲かと思ってたら、アグネスの「想い出の散歩道」と「ポケットいっぱいの秘密」だった。
「想い出の散歩道」は『風街図鑑』で聴いて本当に好きになった名曲で、今回もとびきりの名演。次のアルバムにでも入れてくれないかな。
「ポケットいっぱいの秘密」はいつも通りのアッコちゃんというか、ブッ飛んだジャズアレンジが最高。原曲のメロディの良さは消えない。そこは筒美京平さんの凄さでもある。

アッコちゃんと来たらミナちゃんだ。
美奈子のほうが何を歌うのか予想がつかなかったけど、薬師丸ひろ子「Woman “Wの悲劇”より」と松田聖子「ガラスの林檎」。
あまりにも意表を突きすぎ。そして歌が凄すぎ。神懸かってるとしか言いようがない。
どうせならター坊とアッコちゃん美奈子のティンパンのディーヴァ3人で、75〜76年頃の曲を演ってほしかった。贅沢言い出すとキリがない。

風街ばんどの演奏で「カナリア諸島にて」と「スピーチ・バルーン」。『NIAGARA SONG BOOK』な趣が嬉しい。
(演奏とは関係ないが、21日はスクリーンの映像とテロップの切り替えがイマイチでそこが少し残念。)

一息入れてスクリーンに「卒業」の歌詞。というか歌詞が映し出されるだけで観客がどよめくってのもよく考えると凄い。そんな曲だけで4時間。
斉藤由貴は鬼気迫るというと変だけど、なんだか神々しくてひたすら怖いぐらい綺麗だった。「初戀」も歌って欲しかったなぁ。

EPOは「September」。演奏も最高であらためて良い曲だなぁと。彼女については全然知らないのでアルバムを借りよう。

裕美さん再登場で「さらばシベリア鉄道」。なんとなく終わりが近いことを感じさせる。
それにしても裕美さんは可愛い。それしか言ってない気もするけど。友達でも従姉妹でも彼女でも奥さんでも不倫相手でも母親でもいいなぁと思えるのは香川京子さんと裕美さんだけ。

で「ルビーの指環」。正直言ってピンと来ない曲なんだけど、寺尾聦は絵に描いたようなダンディで格好良かった。なるほどこれが寺尾聦かと思った。

最後は再びはっぴいえんどで、「驟雨の街」。
イントロで細野さんのマイクがオフになってるというアクシデントはあったものの、淡々と演奏を進める3人にもう少しで泣きそうになった。(涙腺が硬直してるので泣けない)

細野さんのMC「はっぴいえんどって地味だよね」。笑ったけど、メインストリームではないところでこれだけのものを作ってきたことへの矜持が垣間見えた気もした。「はっぴいえんどは最後まで天の邪鬼なんだよ、悪い?」と。

その細野さんが柄にもなく全員を呼び込んで、「風をあつめて」。
アッコちゃんと裕美さんが楽しそうにしててこっちまで楽しくなったり、忠さんと美奈子さんが並んでてティンパンのツアー映像を思い出したり。思わず歌い出す。至福の時間。

最後に松本さんの挨拶。ちょっと泣きそうになってたようにも見えた。どうしても尖ってて不敵なイメージがあるからちょっと意外だった。
とか言いつつこっちも泣きそうになってたんだけど。(涙腺が硬直してるので泣けない)

客電が上がると、「スピーチ・バルーン」。余韻。
ライブ中、ここに大瀧さんがいたらと何度も考えたし、これからも何度も考えると思う。
でも〈いない〉ことによって〈いる〉ことはすごく大瀧さんらしいし、多分ご本人もムフフと笑っていることでしょう。
〈終わり〉は〈始まり〉なのだ。大瀧さんは風を起こして松本隆をけしかけただけで、充分満足してるはず。

kazemachi

「BRUTUS 2015年7月号」

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『海街diary』に行く前に是枝監督特集の「SWITCH」と一緒に買った松本隆特集の「BRUTUS」。
正直言ってどっちもあんまり好きじゃない雑誌だけど特集が特集なので。

風街は幻影の街。ただ一曲「風をあつめて」だけは昔から少し位相を異にする気がしていて、それは他の曲と違って風街を幻視する瞬間を描いてるからじゃないかと思う。風街を外から眺めた曲、限りなく松本隆の私小説に近い曲、と捉えてみる。

ついでに最近ご本人にRTされたツイートを再録。

松本隆が描く東京はエキゾチックだ。それは異邦の眼を持っているからで、荷風が東京を江戸に、賢治が岩手をイーハトーブに見立てたことや、もちろん細野さんやあがたさん、アッコちゃんの76年頃のアルバムとも通底する。
大切なのはいったん自分を外部に置くこと、つまり孤独になることで、異邦人になることだ。それはあまりにも内向きすぎる最近の風潮の対極にある。だから余計に大切にしたいし、なにより実践すると日常が変化して愉しい。
この街で朝を迎えるのは初めてだと想像してみよう。

もっとも最近は内向きって言葉じゃ甘くて、どうしても日本が世界の中心だと思いたい人が多いらしい。
球体の表面に中心があるわけがない。軸を通せば極点は出来る。しかし反対側に対極点が出来るから、ハイ対立の一丁上がり。
いいかげん大人になれよ。地球上はどこだって辺境で誰だって異端なんだよ。

…「SWITCH」に続いて糸井重里のインタビューもあり。邪魔。
なんだかここ数年で急にこの人が嫌いになってきた。

はっぴいえんど「はっぴいえんどマスターピース」

買ったら買ったでそんなに聴かないのがボックスセットというもので、去年買った『はっぴいえんど マスターピース』もアナログを1回聴いただけ。


ボックスの作りは丁寧でいい仕事だと思う。

聴くのはもっぱらCDをリッピングしたロスレス。ハイレゾもダウンロードしたけど再生環境を整えてないからフリーソフトでちょろっと聴いただけ。
どのフォーマットでも音質はとんでもなく良いのに、CDの中途半端な紙ジャケとか松本隆の作詞ノートレプリカで裏切られた感が強い。あんなチャチな作りでレプリカを謳われても。
ジャケに封入されてるLPの巻き帯は、斜めに入れられてるので端っこが折れていた。最初から巻いておいてほしかった。

でもまあ、『ゆでめん』と『風街ろまん』に関してはこれさえ持ってれば今後買い替える必要も無さそうなので、そういう意味では買ってよかったかなと思う。