白石雅彦「『怪奇大作戦』の挑戦」

『怪奇大作戦』肝心のBlu-rayは金欠でまだ買っていない。
続いてこれからムック本、サントラと出るようなので嬉しい悲鳴。

そんな中、先鞭を切ったこの本だけはとりあえず買った。
8時間弱で読み終えた。

どこを読んでも面白いが、特に序盤、『マイティジャック』の失敗から『怪奇大作戦』放送に到るまでの紆余曲折は面白い。
円谷英二の日記(これも出版してほしいと個人的には思う)からは、社長としてプロ内部を憂慮する気持ちが痛いほど伝わってきて辛くなる。

図版がないのは淋しいし、すでに亡くなられたスタッフの証言は過去のものに依らざるを得ないから新味がない、という恨みもあるにはある。でもそれは大した問題じゃない。主眼はその先の考察なのだから。
そういう意味で、24話に一切触れてないのはどうかと思う。
せめて満田、山浦両氏が番組に参加することになった経緯ぐらいは書いてもいいはずだ。

とはいえ良書には間違いない。

「恐怖劇場アンバランス 仮面の墓場」「殺しのゲーム」

『DVD恐怖劇場アンバランス Vol.2』。
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第3話「殺しのゲーム」。
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理性的で誠実な岡田英次と、正気と狂気の間にいるような田中春男の対比はいい。
田中春男は好きな俳優さんだが、溝口や成瀬の映画で見られる軽妙な関西人風情とは打って変わって重い雰囲気。いっぽうで岡田英次は極端に言えば『また逢う日まで』からたいして変わっていない。

ただストーリーと演出は平凡。長谷部安春とは相性が悪いのかもしれない。お行儀がよくてあまり印象に残らない一本だった。

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対照的に、作り手の尖りっぷりが半端じゃない第4話「仮面の墓場」。
市川森一のやりたい放題な脚本を、最高な状況にいる唐十郎を使って山際永三が好き放題に撮る。つまらないはずがない。

火葬場・焼身恐怖症なので、ボイラーのシーンが嫌でずっと避けてきたが、無理してでも観るべきだった。めちゃくちゃ怖いが本当に面白い。
緑魔子とか濃いメンツが出てるものの、ほとんど唐十郎の一人舞台。ラストの一人芝居はもちろん凄い。そしてそこに到るまでゆっくりと狂っていく芝居も真に迫っていて怖いったらない。何人焼けば気が済むんだ貴方は。
とにかくオーラが凄いし、目が怖い。

『アンバランス』がお蔵入りになっていちばん割りを食ったのは本作や「木乃伊の恋」あたりじゃないだろうか。
69年のゴールデンタイムと73年の深夜枠じゃ、受け手の唐十郎に対する認識がかなり違っていたはず。
もしも予定通りに放送されていたら…。

「別冊映画秘宝 ウルトラセブン研究読本」

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まだ少ししか読んでいないが、気合い入りまくり、貴重な資料満載の名著である。
「ウルトラセブン」関連の名著だと、ファンコレとてれびくんDX、ベストブックあたりが思い浮かぶが本書はそれらを超えたと思う。
とにかくインタビューが多彩。ちょっとした傍役の俳優さんにまで話を聞いている。
怪獣図鑑や特撮メイキングといった定番のコーナーにも、解説として小林晋一郎、三池敏夫を配することで既視感を排除している。

特に面白かったのは上原正三氏のインタビュー。当時氏が書いていたメモが引用されるが、当時円谷プロ、TBS内で「セブン」がどのように捉えられていたのかがわかって興味深い。当時の感覚としては番組後半は視聴率的も苦戦し、プロ内には〈ダルな雰囲気〉が漂っていたそうである。
今回気付いたのだが、「セブン」後半2クールの視聴率よりも「怪奇大作戦」の視聴率のほうが全体的に高めで安定している。それだけ当時の怪奇・妖怪ブームが凄まじかったというのもあるだろうが、怪獣ブーム終焉の寂しさを感じる。そして「怪奇」が実はそれほどカルトな作品ではないという気も。(なんたってタケダアワーの番組なんだし)
上原氏が言うように、金城哲夫氏が「マイティジャック」を手がけずに「セブン」に全力投球していたら、番組後半はどんな路線になっていたのか、想像すると楽しくも切ない。