上原正三さんの訃報

上原正三さんが亡くなられたそうだ。

作家としての上原さんのキャリアをみれば、東映作品を手掛けていた時代のほうが円谷プロ時代より長く、作品数も圧倒的に多い。
それでも自分にとって上原さんは円谷プロの作家だし、代表作も『帰ってきたウルトラマン』までに集中しているように思う。

傑作は数多ある。でも結局、自分にとっての上原作品といえば、『怪奇大作戦』の「かまいたち」だ。
極端な話、もし他の25本がすべて駄作だったとしても、この一本があるだけで、『怪奇大作戦』は古典になり得た。

自分は「かまいたち」の犯人・小野松夫を見て救われた。
真面目で、大人しくて、いたちのようなおどおどした目をした男。
社会に馴染めず、どこか鬱屈したものを抱えている青年。
その後、小説や映画に接していくなかで、カミュの『異邦人』はもちろん、自分を代弁してくれる作品に出会うことも増えたが、「かまいたち」はそういった類の初めての体験で、中学生の自分には衝撃だった。

小野松夫という人間を描いてくれたことに心から感謝しつつ、今日も仕事に向かう憂鬱な電車のなかから、ご冥福をお祈り致します。
本当にありがとうございました。

RIP. Anna Karina


海外の女優さんはほとんどわからないが、アンナ・カリーナは大好きな一人だった。
ゴダールとの一連の作品は永遠です。
安らかに。

八千草薫さんの訃報

よくよく考えてみると、邦画黄金期の映画で八千草さんを観たのは『白夫人の妖恋』『ガス人間第一号』しかない。

『ガス人間』の八千草さんの美しさは、この世のものとも思えない。荒唐無稽なストーリーが、八千草さんの美貌一点で強固な説得力を持ってしまう。
間違いなく代表作の一つだろう。

他にも『男はつらいよ』のお千代さんとか、最近では『ディアドクター』のおばあちゃんとか、綺麗ななかにも愛嬌のある役柄が印象的。

まだ観たことのない作品がたくさんある。またスクリーンの中で八千草さんに会える。

ご冥福をお祈り致します。

寒河江弘さんの訃報

26日に寒河江弘さんが亡くなった。
しばらく模型誌を読んでないとはいえ、ショック。闘病なさってたことも知らなかった。


(『ホビージャパンEX 怪獣大進撃3』より)

寒河江さんの作例は、主にホビージャパンEXのものが印象に残っている。
映画から受けた熱をそのまま立体化したような、良い意味での荒々しさがある作品群。


(同じく『大進撃3』より、平成ガメラに参加する経緯を綴った文章)

怪獣熱が高じて現場にスタッフとして参加するところは酒井ゆうじさんと同じだ。当時はこんな人が結構いたような気がする。


(『大進撃4』より。本編より格好良いデストロイア)

『空気人形』のエンドクレジットで名前を見つけてちょっと嬉しかったなぁ。

ご冥福をお祈り致します。

ダニエル・ジョンストンの死

Daniel Johnstonが亡くなった。
もちろんショックではあるのだが、個々の作品にはそこまで思い入れが無い。
むしろ正面から向き合うのは苦手かもしれない。


それでもたまに聴きたくなってしまうのは、メロディーセンスとか声質とかもあるんだろうけど、それ以上に、なにかを創るとはどういうことかを身を以て示してくれているからだと思う。

音楽に関わらず、多かれ少なかれ創作衝動に振り回されてる人間なんてみんなクズだし、みんなDaniel Johnstonなのだ。
だから、実際に双極性障害や統合失調症を患っていたとしても、彼をアウトサイダーアートの範疇で語ることは嫌いだ。
(アウトサイダーアートって言葉自体いろいろ問題があると思うのだがとりあえずここでは触れない)

問題は、彼ほど初期衝動に忠実であることが出来るかどうかということで、彼を聴いて笑ってしまったり落ち込んだりするのもそこらへんに理由がある。
(R. Stevie Mooreも近いと思うが、彼のほうがもう少しプロフェッショナル、というのがおかしければ第三者的視点を備えている気がする)

とにかく、音楽の神様は(すべての神様は!)間違いなくあなたを愛しています。
安らかに。

追悼・京マチ子

ちょうど石川淳の『新釈雨月物語』を読んでいるところだった。
京マチ子さんが亡くなった。

東宝系の映画やテレビ(主に特撮だけど)で育った人間なので、他社の俳優さん達の魅力に気づくのは、大学に入って名画座通いを始めてから。

その中で、まず魅了されたのが大映の女優陣だった。
京マチ子、山本富士子、若尾文子、岡田茉莉子、などなど、それまでの映画体験では出逢えなかった女優たち。


↑神保町シアターでの〈大映の女優たち〉特集。

それまでは監督や脚本家で観る映画を決めていたが、好きな女優さんが増えるにしたがって、女優本位で作品を選ぶことも増えた。
映画はダメでも、好きな女優さんが綺麗に撮れてればそれで満足したり。

京マチ子さんは、それまでは『羅生門』しか知らず、しかも作品自体も大して愛せてなかったので、正直言うと印象が薄かった。

そんな印象も、新文芸坐で観た『雨月物語』と、神保町シアターで観た『赤線地帯』で当然のように覆され、大好きな女優さんの一人になった。

これも新文芸坐だったが、『楊貴妃』と『地獄門』の二本立てを観た。
どちらの作品も京マチ子の登場の仕方がほとんど同じで笑ってしまった。
群衆がガヤガヤしだす、するとまず彼女の声だけが響いて、さらに一瞬の間を置いてから京さんがフレームイン。音楽は必ずハープの大仰なグリッサンド。周りの誰もがその美貌に口をポカーンとしている。
(微妙に記憶違いがあるかも)

その後は大作だろうとプログラムピクチャーだろうと、なんとなく面白そうならどんどん観た。


↑こちらも神保町シアター、〈豊田四郎と東宝文芸映画〉特集。

特に印象深いのは、吉村公三郎『偽れる盛装』と豊田四郎『甘い汗』。
『偽れる盛装』では、男を手練手管で手玉にとる芸者役だが、そこに戦後の逞しい女性像を重ね合わせているのが新鮮だった。
したたかに強く生きる京マチ子のかっこいいこと。
余談ながら、彼女に逆上し刃物を持って追い駆けてくる菅井一郎には、菅井一郎という役者には重すぎるだろう伊福部音楽がつけられていて少し笑う。

『甘い汗』の京マチ子も逞しい。
バーの女給として働くグダグダな現状に見切りをつけたいと思いながらもそう出来ない、型通りな言葉を使えばダメな中年女を熱演している。
この熱演度合が凄い。文字通りの体当たり演技で、劇中さんざん強調される夏の暑さと相俟って彼女の肉体が強烈な印象を残す。
前後のシーンはすっぽり抜け落ちているが、彼女が早朝、外でタバコを吸うシーンが個人的には好きだ。

まだ観てない作品もたくさんあるから悲しくはない。
でもやっぱり寂しいよ。

合掌。

追悼 モンキー・パンチ先生

訃報が続く。白石冬美さんに続いてモンキー・パンチ先生が逝ってしまった。

たぶんほとんどの人がそうであるように、自分も『ルパン三世』はアニメが初体験だった。
なので、初めて原作を読んだときは戸惑った。全く別物だったから。


(中公文庫版で集めました)

線が多い独特の絵で、ストーリーも故意にぼかしてあるような印象があって、正直に云えばとっつきにくかった。
ところが気がつくと独特の間や描線がクセになっていて、チマチマ集めていった。

自分にとってのルパンはどうしても大隅ルパンになってしまうけど、それもあの原作があればこそだ。
原作者と演出家の幸福な出会い、その最たるものだと思う。

もうひとつ、モンキー先生といえば『電画なっ!』を思い出す。
2000~01年頃放送していた、伊集院が司会のCGを紹介する深夜番組で、モンキー先生は松本零士先生と共によくコメンテーターとして出演していた。
正直いって投稿されるCG作品はどうでもよくて、伊集院とコメンテーターのトークが大好きだった。

その後、モンキー先生自身もCGを学ばれていたはず。(大隅監督も一緒だったような……うろ覚え)
カッコイイオヤジだなーと思った記憶がある。

作品は数多あれど、やっぱりルパンという希代の名キャラクターを生んでくれたことへの感謝が一番大きい。

ありがとうございました。